虐待を考える演劇の力 劇作家「解決への希望伝える」

作品中、遥は「母親失格」「いいママ」と何度も口にする。このせりふに山谷さんが込めたのは、2歳の息子を育てる母親としての実感。産んだ瞬間から完璧な母親でいることを求められ、「まじめな人ほど理想の母親像に追い詰められる。育児と虐待は紙一重だ」と感じていたからだ。

一方で、助産師など周囲の助けは「神」と思うほどありがたかったが、新型コロナはそんな人と人とのつながりを奪っていった。一人で抱え込む人が増えてしまう。危機感を感じ、作品も大幅に書き換えた。

人との思いつなぐ

親や誰かを責めるのではなく、虐待について真剣に考えてもらいたい。そこで信じるのは演劇の力だ。山谷さんは「メディアは事実を伝えるが、人は身近でないことは冷たく残酷に評価してしまう。でも、物語は共感してもらえるから、希望がある」と力を込める。

自身が10年前から主宰する演劇集団「Ring-Bong(リンボン)」で、1月末から公演を予定していたが、東京での緊急事態宣言発令を受けて5月に延期した。

「演劇は不要不急と区分される最たるものかもしれない。それでも、物語を同じ空間で共有し、考えることは重要ではないか」と話す山谷さん。こんな社会だからこそ、人と人との思いをつなごうとしている。

公演の詳細は、リンボンのホームページ(http://www.ring-bong.com)。問い合わせは、080・4080・8736(平日正午~午後5時)。

会員限定記事会員サービス詳細