「ヒトラーの時代」などドイツ現代史の研究や評論活動で知られる西洋史家で京都大名誉教授の野田宣雄(のだ・のぶお)さんが令和2年12月29日、老衰のため亡くなったことが23日分かった。87歳。葬儀・告別式は済ませた。
昭和8年、岡山市生まれ。31年に京都大文学部卒業後、ベルリン自由大留学を経て京都大助手となり、同大教授を長く務めた。専攻はドイツ現代史。哲学と芸術に親しむ市民層が厚い同国から、なぜ過激な排外主義を掲げるナチスが生まれ広い支持を集めたかを、宗教社会史的視点から探る「教養市民層からナチズムへ」などの著作を発表し、日本における同分野の泰斗として知られた。京大定年退官後は南山大教授としても教鞭(きょうべん)をとった。
戦後の歴史的、国際的視野を欠いた平和主義への違和感から、保守派の論客としても「正論」や「諸君!」などで活躍し、本紙「正論」欄でも長く健筆を振るった。平成7年、読売論壇賞。他の著書に「二十世紀をどう見るか」「歴史をいかに学ぶか」など。浄土真宗の僧侶でもあった。