コロナ禍の中、受験シーズンに突入。受験生の皆さんは、気をつけることが多いと思うが、集中してベストを尽くしてほしい。(情報工場「SERENDIP」編集部)
◆社会性養う教育手法
□『スタンフォードが中高生に教えていること』星友啓著(SB新書・900円+税)
米国の名門校が開設する「スタンフォード大学・オンラインハイスクール」は、進学校ランキングで「全米1位」を獲得している。その現校長である著者が、同校で行われるユニークな教育について解説。
同校では、校名の通りすべての授業がオンラインで行われ、全米および世界各国の中高生が在籍する。カリキュラム上の特徴の一つは「哲学」を卒業必修科目としていること。予測不能な社会の中で自らの頭で考え「生き抜く力」を身につけさせるためだ。
最新研究に基づく「ソーシャル・エモーショナル学習(SEL)」も取り入れる。自分や相手の感情を理解することで、社会性を養う教育手法である。
生徒たちはオンライン授業を通じて仲間をつくり、濃密な知的コミュニティーが形成されているという。教室での画一的な授業よりもオンラインの方が、各生徒の「個」と向き合えるため、やる気や個性を生み出しやすいのかもしれない。
◆観光振興に一石
□『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』高橋克英著(講談社+α新書・900円+税)
北海道の「ニセコ」は、今や世界的なスキーリゾートとして知られる。同地が国内外の富裕層の観光客や投資家を引きつけ、開発が進む理由を、金融コンサルタントの著者が解説。
ニセコの最大の魅力は「パウダースノー」だ。さらさらして滑りやすい雪は希少で、一度経験したスキーヤーは、他のスキー場には戻れないのだという。
こうして世界中のスキーヤーが訪れるようになったニセコには、彼らのために外資の五つ星ホテルが続々と建設されるとともに、海外からの高級コンドミニアムなどの不動産投資が急増した。その結果、ニセコの地価上昇率は6年連続全国1位となっている。
著者によれば、ニセコの開発は、ターゲットに中間層も含めた「全方位型」ではなく、海外、富裕層、スキーに絞った「選択と集中」をしたことで成功した。全国一律で誰も彼も受け入れる方策をとりがちな観光振興のあり方に一石を投じるものといえそうだ。
◆まちの人材育成
□『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』手塚純子著(木楽舎・1500円+税)
千葉県流山市でmachimin(まちみん)というコミュニティースペースを運営する著者が、その意義や目的、実際の活動内容などを紹介する。
育児休暇中に居住する流山市のまちづくりに関わった著者は、市を「株式会社」に見立て、人事部長として「まちの人材育成」をしたいとの妄想を抱く。そしてそれを実現しようと、平成30年に、ローカル線の流鉄流山線流山駅構内にmachiminを開設する。
machiminではさまざまなイベントが実施され、企画者は著者以外に、たまたま訪れた市民だったりする。それぞれが自分の「好き」や「得意」を生かして、自主的にイベントを企画運営するのが特徴だ。
そうした活動によって地域の課題を解決するプレーヤーやリーダーを育てるのが著者の目的だ。居場所やつながりを作るだけでなく、「人を育てる」というダイナミックな地域振興の新しいかたちを、machiminは示しているのかもしれない。