電通などコロナで広がる本社売却 進む都心オフィスの空洞化、外資も触手 

電通本社ビル=平成29年7月、東京都港区(本社チャーターヘリから、納冨康撮影)
電通本社ビル=平成29年7月、東京都港区(本社チャーターヘリから、納冨康撮影)

 電通グループが本社ビル売却の検討を発表するなど、都心のオフィスを売却・縮小する動きが大企業で広がっている。丸紅は5月にも移転する新本社で社員用の座席数を3割減らす。新型コロナウイルスの感染拡大で社員のテレワークが定着し、都心に大型のオフィスを構えている必要性が薄れてきているためだが、こうした不動産を割安と見た外資が買い取ったとみられる事例も出ている。

 電通グループは、東京・港区の本社ビルを売却する。売却額は国内のビル取引としては過去最大級の3000億円規模になる見通し。新型コロナの影響で広告収入は低迷、本社ビルに勤務する約9000人の出社率は最近では2割程度にとどまり、余剰スペースが生じていることから、売却で資産の効率化を図る。

 不動産サービス大手のジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)によると、これまでのビル取引の国内最高額は、平成18年に不動産ファンドが香港企業から取得したJR東京駅近くのオフィスビル「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」の約2000億円という。

 電通の本社ビルが立地する汐留のような一等地にある大規模なオフィスビルは従来、〝旧財閥系〟を中心とした日本の大手資本が独占し、海外資本に売却されることはほぼなかった。海外投資家には、コロナ禍で「千載一遇の取得機会」と捉える向きもあるようだ。

 本社ビル売却では昨年12月、音楽・映像事業を手がけるエイベックスが、入居する東京・南青山の「エイベックスビル」の売却を発表した。売却先はカナダの不動産ファンドとみられる。またアパレル大手の三陽商会も昨年、東京・銀座の旗艦店ビルを売却した。

 不動産関係者は、コロナ禍を受けた金融緩和でだぶついた資金が、低迷する世界の不動産市場の中でも収益性を維持する日本市場に向かっていると指摘。基金を通じた投資などで実情は不明だが「中国投機筋の資金も過熱投資を招いている」(関係者)と指摘する声もある。

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