美村里江のミゴコロ

お正月だけではもったいない

昆布とカツオ、またはアゴなどで濃いめのだしをとり、塩で薄口に調える。

スライサーで薄く切った大根とニンジンを5センチほどの細い千切りにする。同じ長さで白髪葱(ねぎ)、三つ葉の茎も同様に切り、飾りの葉は別にしておく。

だしに三つ葉以外を加え、沸騰しないように1、2分。火を止めたら三つ葉を入れ、30秒ほどおく。

餅は少し焦げ目がつくように焼き、椀(わん)に入れたらしょうゆを少し垂らす。ユズ皮を一片のせ、そこに具入りのだしを注ぐ。飾りの葉をあしらって完成。かまぼこや下味をつけた蒸し鶏を足すのも良い。

レシピ文から入り恐縮だが、これがわが家のお雑煮だ。正月以外にも頻繁に食卓に上る。

あれは結婚前の初夏、夫が家に遊びに来ることになり「何か食べたいものは」と尋ねると、「お雑煮!」と笑顔で即答された。なぜ今お雑煮かと聞くと、「お店では食べられないから」とのこと。

築地に取材に行ったとき、「お雑煮と喫茶」のお店にお邪魔した。それ以外にもお雑煮のお店を見かけたことはある。でもファミレスには置いていないし、一般的ではないのも確かだ。

夫のリクエストに応えようと、実家ではどんなふうだったのか尋ねた。しかし、共働き家庭で料理に重点が置かれていなかったため、記憶にないという。

実家で食べていないのに食べたくなるのかと不思議だったが、「数回だけ食べた親戚の家や宿泊先でおいしかったので、逆に貴重になっている」とのこと。なるほど…。

私が食べてきたお雑煮は、「根菜と鶏肉入りのしょうゆ仕立て、切り餅にかまぼこ、ゆでた青菜を添える」という具合。関東の王道の味と思われる。

せっかくなのでわが家の味を作ろうと思い、いろいろ試していって今の形になった。千切りは早く火が通り歯応えも楽しく、余ったら他の料理にも幅広く使い回せて便利だ。夫の好物として、他のタンパク質系のおかずとセットで年に何回も作る。

日本各地にいろいろなお雑煮があるが、四国の人から「根菜入りの白みそ仕立て、あんこ入り丸餅、仕上げにイクラを」と聞いたのが一番驚いた。甘塩(あまじょ)っぱいおいしさなのだろうか。

あなたのお家(うち)のお雑煮は、どんな感じですか。

【プロフィル】美村里江(みむら・りえ) 昭和59年、埼玉県出身。女優としてドラマや映画に多数出演する一方、エッセイストとしても活動。平成30年に「ミムラ」から改名。著書に『たん・たんか・たん』(青土社)など。