【ワシントン=塩原永久】米大統領選で勝利した民主党のジョー・バイデン氏(78)が20日(日本時間21日未明)、首都ワシントンの連邦議会議事堂で宣誓し、第46代大統領に就任した。就任演説で「米国民の結束を取り戻す」と述べ、社会の分断を克服し、新型コロナウイルス対策に全力をあげる方針を表明。「同盟を修復して再び世界に関与する」と国際協調外交への復帰も宣言した。就任初日に地球温暖化対策の「パリ協定」復帰を決める大統領令に署名するなど、本格的に業務を始動した。
バイデン氏は演説で「民主主義は壊れやすいが、勝利を収めた」と語った。共和党のトランプ前大統領(74)を支持する白人至上主義者らが、連邦議会議事堂に乱入した事件を乗り越え、平和的な政権移行を遂げたとたたえた。
新型コロナが「1年間で第二次大戦と同じくらいの米国人の命を奪った」と指摘。コロナ危機の国難克服を優先すべきときだと強調した。また、白人至上主義や過激主義に「われわれは立ち向かい、打ち勝つだろう」と話し、国民の融和を訴えた。その上で改めて「すべての米国民の大統領になる」と語った。
また、「世界平和や安全をめぐり米国は力強く信頼されるパートナーになる」と言及。「米国第一」を唱えるトランプ政権下で強まった孤立主義的な傾向から脱却する姿勢を示した。
就任式には、欠席したトランプ氏に代わり、ペンス前副大統領(61)が出席した。議事堂襲撃を受けてワシントンの中心部が封鎖され、2万人以上の州兵が展開する厳戒態勢が敷かれた。就任式後に新大統領が行う恒例のパレードも大幅に縮小された。
その後、ホワイトハウスに入ったバイデン氏は、パリ協定の復帰手続きを進める文書など十数本の大統領令に署名した。即日、国連に通告され、30日後に正式に協定加盟国に戻る。
このほか署名したのは、世界保健機関(WHO)脱退の撤回や、国民にマスク着用を求める新型コロナ対策、イスラム圏からの入国規制の破棄、メキシコ国境の「壁」建設の停止を指示する文書など。米メディアによると、就任初日に多数の大統領令に署名するケースは異例で、トランプ前政権が進めた政策からの転換をアピールする。
政権幹部は記者団に、バイデン氏が今後も(1)新型コロナ対策(2)景気支援策(3)地球温暖化問題への対処(4)人種格差の是正-をめぐる多数の文書に署名する予定だと明らかにした。