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国民の怒りと祈りが生んだ映画「めぐみへの誓い」 葛城奈海

映画「めぐみへの誓い」のポスター
映画「めぐみへの誓い」のポスター

産経新聞では、頻繁に取り上げられる拉致問題。いうまでもなく、拉致問題を放置すれば、明日はわが身かもしれないし、自分の愛する人の身に降りかかるかもしれない。しかしながら、日本国全体を見渡せば、当事者意識を持つ人がまだまだ少ない中、大きな力を持つ映画が製作された。

『めぐみへの誓い』。もともと劇団夜想会(野伏翔主宰)の自主公演として始まり、その後、拉致問題対策本部主催の舞台劇として全国35カ所で上演され、昨年までの鑑賞者数は約3万人に上る。役者たちが体を張って伝える拉致の実態は、見る者の心を揺さぶり、文章や講演ではなかなか伝えきれない当事者意識を目覚めさせるエネルギーに満ちていた。

本作品をさらに多くの国民に見てもらうことで、被害者奪還への世論を動かしたいと思っていたところ、映画化の話が持ち上がった。一般の映画館で上映するためには、政府による支援は受けられないという。製作委員会が立ち上がり、クラウドファンディング(CF)を行い、文字通り、国民の思いが製作を後押しした。コロナ禍で社会が停滞する直前に滑り込むように撮影が実現し、完成した作品は圧巻であった。これほど生々しく被害者たちの北朝鮮での生活まで描かれた作品が、これまであっただろうか。舞台劇にはなかった特定失踪者や北朝鮮向けラジオ放送についても映画には織り込まれている。野伏監督以下、関係各位の熱意と実行力に敬服するばかりだ。印刷会社の社長役として複雑な役どころを見事に演じた俳優の小松政夫さんにとっては、これが遺作となった。

エンドロールには、映画製作を支援した人々の名前が延々と連なる。この作品を生んだのは、日本人の怒りと祈りなのだ。プロデューサーの松村譲裕氏は言う。「この映画の目的は拉致問題を風化させないことではない。被害者奪還だ」と。

予告編の言葉が胸に刺さった。「この物語の結末をつくるのは、私たち一人ひとりです」。2月19日から、全国順次ロードショー。多くの人の心に火を点(つ)ける作品となることを切に願う。

【プロフィル】葛城奈海

かつらぎ・なみ やおよろずの森代表、防人と歩む会会長、ジャーナリスト、俳優。昭和45年、東京都出身。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会幹事長。著書(共著)に『大東亜戦争 失われた真実』(ハート出版)。