新型コロナウイルスの「変異」は、なぜ起きるのか? 現段階で見えてきたこと

免疫不全患者へのワクチン接種が鍵?

とはいえ、新型コロナウイルスに感染した場合、どのような免疫不全患者で最も症状が長期化する傾向があるのか。この点を、よりきちんと理解する必要がある。

「免疫不全」の範疇は広範囲にわたり、さまざまな状態が含まれる。このため、それらすべてが同様に症状の長期化リスクを抱えているわけではない。「免疫不全患者」の定義には、病原体と戦う能力を低下させるまれな先天性疾患を抱える人だけでなく、移植や自己免疫疾患の緩和のために免疫抑制剤を服用している人なども含まれる可能性があると、コーネル大学のウイルス学者ブライアン・ワシクは言う。

免疫不全患者と新型コロナウイルス感染症の症状の長期化、そして症状の長期化とウイルスの進化との間の関連性を示す証拠は、ワクチン接種順位を巡る議論において検討を促すだけの十分な説得力がある。

米疾病管理予防センター(CDC)の委員会は12月20日(米国時間)、免疫不全患者には3番目の「フェーズ1c」の順位でのワクチン接種を推奨すると発表した。つまり、がん患者や動脈性心疾患患者、肥満患者などと同時に接種を受けることになる。

この決定は、免疫不全患者が抱える独自のリスクに対処することを目的としたものだった。しかし、これらの患者にワクチンを接種することにより、パンデミックをさらに悪化させる変異株の台頭を防げるかもしれないという点は検討されていない。このため、直接関連する症例の報告は少ないものの、公衆衛生当局は免疫不全患者をもうひとつ早い「1b」グループにするほうが賢明かどうか、ウイルス学者と相談すべきだろう。

ウイルスの変化を監視することの重要性

そして少なくとも、新型コロナウイルスの潜在的な変化をもっとしっかり監視する必要がある。米国政府はウイルスシーケンシングの取り組みを組織化することに、より注力すべきだろう。

米国のCDCには、パンデミック中のシーケンスデータを取得する試みである「Spheres」と呼ばれるプログラムがあるが、十分に機能していない。英国は新型コロナウイルス感染症の症例の推定10%のエネルギーを配列決定しているが、対する米国は0.3%にすぎない。

「これではちょっと少なすぎます」と、ミシガン大学医学部のアダム・ローリングは指摘する。そして、自分のチームは米国の配列変化データの約2%をアップロードしたという。「米国の大部分の場所では、こうした作業に多くの時間や労力を割いている人がいません。ウイルスの進化をもっとしっかり監視することによって、どこで(どのような患者の体内で)ウイルスにこれらの変化が蓄積する可能性が高いのか、明らかになるかもしれません」

新型コロナウイルスの変異を監視するにあたり、それらの変異の疫学的および臨床学的重要性を理解するには、さらなる研究が必要であると認めざるをえない。一方、ウイルスは依然として猛威をふるっており、人から人へと感染しながら変異する機会はさらに増えている。免疫不全患者で感染の症状が長期化する傾向と、それに伴ってウイルスが進化する可能性については注目しておく必要があるだろう。

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