最近、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を目にしない日はないくらい、デジタル化への対応が、企業における喫緊の課題となっています。
そんな中、「デジタル」から最も遠い世界のひとつが「保育業界」です。本書で詳しく書かれていますが、多くの保育園では、記録や計画などの事務作業が手書きで行われているのが現状です。
著者の貞松成氏は、千葉県を中心に認可保育園を七十数園運営する若手起業家ですが、このような保育の現場に疑問を抱き、保育園業務支援システムを開発して、保育士の事務作業をデジタル化したり、ロボットを昼寝中の園児の呼吸チェックに活用するなど、最新テクノロジーを使ってイノベーションを起こそうとしています。
保育の現場にテクノロジーを持ち込むことに対し、当初ベテランの保育士からは批判や抵抗もあったそうですが、貞松氏の考えは違います。
事務作業などデジタルで代替可能な仕事、あるいはデータ化することで客観的な分析や予測が可能になる仕事はどんどん効率化し、その分の時間を園児とのふれあいに回して保育の質を向上させるということなのです。
就学前のお子さんをもつ親御さんや教育者の方々に読んでいただきたいのはもちろんですが、会社のデジタル化への対応で悩んでいる経営者や管理職、新規事業に取り組んでいるビジネスパーソンの方々にもさまざまな示唆を与える内容になっています。
(プレジデント社・1500円+税)
プレジデント社 書籍編集部 田所陽一