アートウォッチ

会田誠が描くアマビエ コロナ時代の「お札」に 角川武蔵野ミュージアムで展示

【アートウォッチ】会田誠が描くアマビエ コロナ時代の「お札」に 角川武蔵野ミュージアムで展示
【アートウォッチ】会田誠が描くアマビエ コロナ時代の「お札」に 角川武蔵野ミュージアムで展示
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 江戸後期の瓦版に描かれた妖怪アマビエのイメージは昨年来、疫病退散の護符として世に拡散され、人の心を惹(ひ)きつけてきた。ネット上にあふれる象徴的モチーフに、気鋭の美術家6人が順次挑む「コロナ時代のアマビエ」プロジェクトが角川武蔵野ミュージアム(埼玉県所沢市)で展開中だ。トップバッターを務めた会田誠(55)に聞いた。

あえてストレートに

 《疫病退散アマビヱ之図》。海中から姿を現したアマビエが、縄文時代の銛(もり)を持つ漁民に優しく寄り添っている。背後から照らすのは太陽、あるいはコロナウイルスか。原画の展示とともに、ミュージアムの2階エントランスに縦5メートル、横3・6メートルに引き延ばした巨大バージョンを掲げ、来場者の目を楽しませている。

 美術界の鬼才にしてはずいぶんストレートな表現だ。「現代美術家ならではのひねり、増幅、逸脱を期待されてるのはわかっていた。でも6人続くシリーズの入り口はとっつきやすい、素直なものがいいんじゃないかと思って」。疫病退散のお札(ふだ)として、色鮮やかなポスター風の作品に仕上げた。

 言い伝えでは、肥後国(熊本県)の海からアマビエが現れ、漁師に「疫病が流行するから、私の姿を描いた絵を人々に見せよ」と予言したとされる。会田はこの伝承を下敷きにしつつ、「漠然とした古代を舞台に、海の民と交流するアマビエにしてみた。海の民は男か女かわからないように描いたので、両性具有の妖精みたいなものを想像していただいてもいい」と語る。

 ファンタジーのような世界は、小中学生のころ憧れていたイラストレーターらの影響という。「絵を自発的に描き始めたころ、尊敬していたのはルーベンスでもゴッホでもなく、動物図鑑などを多く手掛けられていた清水勝さんとか、映画『スター・ウォーズ』のポスターで知られる生頼(おおらい)範義さんとか。その頃の気持ちに戻って描いてみようと思ったんですが、これが大変でした」

 太陽とウイルスを合体させたような図像も気になる。「地球上に生命が生まれたのは太陽エネルギーの恩恵。そして原始の生命体とはウイルスのようなものだったのだろう。人間も生命体の一員として、謙虚さを持つべきなんだろうな…と」。広い意味での生命賛歌なのだ。

美術家6人が参加

 今回のプロジェクトでは会田を先頭に、鴻池朋子、川島秀明、大岩オスカール、荒神明香、未発表の1人の計6人が順次、同館で作品を発表していく予定。既に今月8日、第2弾として鴻池の作品《武蔵野皮トンビ》もお披露目された。隈研吾設計による、巨岩のようなミュージアム外観に、縫い合わせた牛革に描かれたトンビやさまざまな生き物たちがピタリと張り付いている。

 堅牢(けんろう)な岩に対し、生き物は脆弱(ぜいじゃく)に見える。屋外で今後約1年間、作品がタフに変化する様子を見守るという。それは過酷な環境に耐えながら、有限の命を脈々とつないできた生物の歴史と重なる。つまり今回のプロジェクトが掲げる「現代のアマビエ」とは、コロナ禍を生きる人々の心を和らげたり鼓舞したり、何らかの変化を与え得る造形ということだろう。

 コロナ禍はアーティストの創作に今後、どんな影響を与えていくだろうか。会田は「わからない。コロナを題材に作るかどうかも…」と言う。ただ、コロナの時代に自身の過去作品が、皮肉な形で想起されることも。会田が扮(ふん)する架空の首相(安倍前首相を想起させる)が、急激なグローバリズム化に対して鎖国を訴える映像作品《国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ》だ。「コロナのパンデミックによってグローバリズム化に鉄槌(てっつい)が下される感じは、強烈な皮肉というか、興味深い。そういうテーマの作品は作るかもしれないですね」。会田は今年、オリンピック・パラリンピックが開催予定の首都に、城の建立も予定している。今後の展開が楽しみだ。

 《疫病退散アマビヱ之図》は3月末まで展示予定。