復興日本 東日本大震災10年

第1部 再生(3)帰宅難民「帰らない」選択

都の災害対策を担う佐藤義昭・防災計画課長(47)は「この出来事が私たちの認識をがらりと変えた」と語る。「都内では、地震による被害はそこまで大きくなかったが、帰宅困難者であれだけ混乱した。首都直下地震だったら、どんなことが起きるか…」

都は東日本大震災後、首都直下地震の被害想定を見直し、帰宅困難者対策は大幅に中身を刷新した。都外からの通勤・通学、買い物客などの人流データを分析し、都内に最も多くの人が集中する平日の昼間だと517万人の帰宅困難者が発生するとはじき出した。

この人たちが家路を急ぐとどうなるか。

主な道路は車道まで人であふれる。緊急車両は通れず、救助作業は進まない。地震によるビルの倒壊や火災も想定される。

都は震災翌年、帰宅困難者対策条例を制定。事業者には、従業員が待機できるよう3日分の水や食料の確保を求めた。都民に対しても、職場にとどまるなどむやみに移動しないよう努力義務を課した。

想定する帰宅困難者517万人のうち、オフィスや学校など滞在場所がある人を除けば、行き場のない人は5分の1以下の92万人にまで減らせるからだ。

さらに、この92万人が雨露をしのぎ食事をとれる場所として、一時滞在施設の確保も始めた。図書館などの公的施設に加え、民間事業者とも協定を結んだ。昨年7月現在で、都内には1118カ所、42万人分の一時滞在施設がある。

歩けた成功体験が「危険」

ただ、課題もある。

平成30年の都民アンケートで、帰宅困難者になった場合の対応を尋ねたところ、約4割が「とにかく歩いて帰る」と回答した。「災害時には会社などにとどまる」という原則は刻まれていなかった。

安全な場所が用意されても、変わらない意識。ただ、施設にとどまったとしても残る課題を工学院大学建築学部の村上正浩教授(都市防災)は指摘する。

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