厳しい寒波の到来により全国規模で電力需給が逼迫(ひっぱく)している。全国の大手電力会社で構成する電気事業連合会が利用者に対し、効率的な電気使用を求めた。
暖房需要が急増し、電力各社が主力とする液化天然ガス(LNG)が不足傾向に陥っているという。電力供給が途絶すれば、低温により住民の健康が脅かされる。安定的な電力供給に全力を挙げなくてはならない。
無理のない範囲で企業や国民も節電に協力する必要があるが、政府がこれを正式に要請していないのは疑問である。危機管理の姿勢が問われるのではないか。
安定的な電力供給を確保するには、安全性を確認した原発の再稼働も不可欠である。政府は早期再稼働を支援すべきである。
すでに電力設備の使用率は9割超の水準に達しており、ほとんど余力がない99%を記録する電力会社が相次いでいる。
電力業界では各社が融通し合って停電リスクを回避する、綱渡りの状態が続いている。
大型発電所で設備故障などが発生すれば、大規模な停電に発展しかねない。特に冬場は、発電所内のパイプラインが凍結するなど不測の事態も起こり得る。老朽化した発電所の活用を含め、電力危機を乗り切らねばならない。
一部では大口需要先への電力供給を縮小している。病院や学校、家庭向けの供給を優先する柔軟な体制を構築してほしい。
各家庭でも、人がいない部屋の照明を消したり、暖房を使う部屋を集中したりするなどの賢い節電で協力したい。
暖房需要が急激に伸びても、海外からのLNG輸入を急増させることは難しい。中国や韓国でも寒さが厳しく、LNG需要が増えているからだ。LNGは国内で2週間程度の在庫しかなく、原油のような備蓄制度もない。当面はLNGの不足が続くという。
天候不順が続く中では太陽光発電による発電量が少なく、電力不足には対応できない。政府は太陽光や洋上風力などの再生エネルギーを拡大し、2050年までに脱炭素社会の実現を目指すが、それには安定的な電力供給体制を確立することが前提である。
政府はまず国民に現在の電力需給の厳しい状況を丁寧に説明し、そのうえで節電に対する協力要請をためらうべきではない。