入国全面停止要求の自民、経済重視の首相との間に深まる溝

 政府による新型コロナウイルスの水際対策に自民党内で不満が強まっている。政府は昨年末に全世界からの外国人の新規入国を一時停止し、今月8日にはすべての入国者に陰性証明を求める強化措置を打ち出したが、党内には中国や韓国など11カ国・地域と継続中のビジネス関係者らの往来の一時停止を含む入国の全面停止を求める声が強い。ただ、菅義偉首相は相手国で変異種の市中感染が確認されない限り入国は止めない方針で、溝が深まっている。

 「緊急事態宣言は国民の共感を得なければ機能しない。国民の共感を得るためにもビジネス往来を止めるべきだ」

 12日の党外交部会で佐藤正久部会長がこう気勢を上げると、複数の議員が「そうだ」と応じた。1時間の予定だった会合は2時間近く続き、発言者14人のうち13人が入国の全面停止を主張、1人が検査態勢の強化を求めた。出席した中堅は「ビジネスと言いながら観光客が入っている」と批判。閣僚経験者も「中国や韓国に配慮しているのではないか」と疑問を投げかけた。

 強硬姿勢の背景には、党を支持する保守層を中心に水際対策の強化を求める意見が強いことがある。出席議員は「政府は世論が見えていない」とこぼす。昨年、感染が広がった際も政府が中国全土の入国拒否を打ち出したのは3月で、世論や野党の批判を浴びた。

 だが、政府はビジネス関係者らの入国を継続しており、党内からは「首相が固い」との不満が漏れる。

 8日の緊急事態宣言発令の際、政府内では入国の一時停止も検討した。ただ、感染防止と経済活動の両立を重視する首相は継続を判断。首相は8日のテレビ朝日番組で「安全なところとやっている」と述べ、相手国で変異種が確認されれば停止する従来の方針を繰り返した。

 11カ国・地域からは短期出張者だけでなく農業や建設業などで活動する技能実習生らも入国している。小泉進次郎環境相は12日の記者会見で「経済が悪化すれば自殺者も増えていく。社会全体を見た上で命が失われることを防ぐ(首相の)判断だ」と理解を示した。

 政府内には「根拠なく停止したら再開が困難になる」(外務省幹部)との声もあるが、ある議員は「政府に全面停止を求め続ける」と息巻く。党側の主張に折れて全面停止したとなれば、政権の求心力の低下につながる懸念もある。(石鍋圭、沢田大典)