新聞に喝!

安全保障の現実を直視すべきだ インド太平洋問題研究所理事長・簑原俊洋

尖閣諸島。手前から南小島、北小島、魚釣島=沖縄県石垣市(鈴木健児撮影)
尖閣諸島。手前から南小島、北小島、魚釣島=沖縄県石垣市(鈴木健児撮影)

東京五輪・パラリンピックが開催されて希望と活気にあふれるはずだった2020年は、コロナ禍によって台無しとなった。思えば約10年前も東日本大震災によって日本は同様に厳しい状況に直面していた。そして、この震災を教訓として、国土強靱(きょうじん)化は一気に進み、次なる計画として今後5年間で15兆円を投じて自然災害による被害を最小化させる国家目標が掲げられた。国民の生命を守るという観点からすれば、自然災害に対する有効な防御策も広い意味での安全保障の概念に含まれるべきであろう。

実際、自然災害に対して現在の日本は世界トップクラスの「防衛能力」を有している。目下の新型コロナウイルス感染に対しても、国民は不必要な宴会や旅行を極力自粛し、マスク着用の要請もきちんと守る。こうした姿勢は欧米-特に米国-の対応とは異なり、それもあって被害状況も桁違いに少ない。海外で接種が始まっているワクチンも、政府によって相当数が確保され、まもなく無償で国民に提供される。このように、医療面からの安全保障についても日本はそつなくこなし、コロナ禍によって国家が揺らぐ状況にはない。

翻って、伝統的な安全保障領域ではどうであろうか。令和3年度予算案の防衛費は5兆3422億円で、過去最大を更新した(それでも国内総生産=GDP=の1%を超えるものではないが)。目玉は配備が中止された地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」に取って代わる「イージス・システム搭載艦」の導入だ。他方、専守防衛の姿勢を守って「敵基地攻撃能力」保有の判断が先送りされたのみならず、自衛官の慢性的な人員不足に対する本格的な対策もされない。