【ワシントン=黒瀬悦成】バイデン次期米政権は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が第8回党大会での報告で米国を「最大の主敵」と言明したことに関し、北朝鮮が20日のバイデン大統領就任後、次期政権の対北姿勢を試すため弾道ミサイル発射など挑発行為を仕掛けてくる証左とみて、日韓などの同盟諸国と連携して対抗戦略の構築を急ぐ構えだ。
バイデン氏は昨年の選挙期間中、金氏を「ならず者」「独裁者」などと呼び、核・弾道ミサイル開発の放棄に応じない北朝鮮に厳然と対応していく立場を打ち出してきた。
これに対し北朝鮮はバイデン氏を「老いぼれの狂人」「狂犬」などと罵倒。トランプ大統領が金氏と構築したと称された「親密な関係」が清算されるのを受け、バイデン政権は金氏ら北朝鮮指導部と、朝鮮半島の非核化実現に向けた協議の枠組みを最初から作り直すことになる。
バイデン氏が副大統領を務めたオバマ前政権は「戦略的忍耐」と称して北朝鮮の核・弾道ミサイル開発を実質的に看過してきた。また、トランプ氏は金氏との首脳会談で核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の凍結を受け入れさせたものの、実質的な核放棄の取り組みを前進させるには至らなかった。
バイデン次期政権としては、これらの失敗を教訓に、トランプ政権の「遺産」となる、北朝鮮に対する国際的な制裁ネットワークを再活性化させ、北朝鮮に対し、非核化に向けた政府間協議に応じるよう圧力をかけていく考えだ。
また、次期政権にとって大きな懸念材料となるのが、今回の報告が全米を射程に収める射程1万5000キロのICBMの開発に言及していることだ。
北朝鮮は昨年10月の軍事パレードで、11の車軸を持つ運搬車両に搭載された巨大ICBMを公開した。
ミサイルの大型化は、より破壊力のある大型核弾頭や、複数の核弾頭が個別の目標を攻撃できるMIRV(多弾頭独立目標再突入体)の搭載を想定しているとみられ、米国としてもミサイル防衛体制の拡充を迫られるのは確実だ。