SNSの罠

ネット被害、裁判迅速化へ 地方の負担軽減は不透明

舞台は東京に集中

さらに、ツイッターやフェイスブックなど海外に本社を置くSNS事業者が相手の訴訟は、民事訴訟法の規定で東京地裁でしか起こすことができないことも、壁を高くしている。また、多くのプロバイダーが東京に本社を置くため、2度目の訴訟も東京地裁に偏りがちだ。

特定後の損賠訴訟は、各地の裁判所で起こすことができるが、それまでの労力やコストを考えると、地方在住者の負担は大きい。何度も上京し、投稿者を特定できても、賠償金の相場は数十万円程度。訴訟費用や交通費を差し引くと「大赤字」のケースも多い。

総務省は有識者会議の提言を踏まえ、今年の通常国会に、投稿者情報の開示手続きを定める「プロバイダー責任制限法」の改正案を提出する方針だ。仮処分や訴訟によらない「非訟手続」を創設し、1回の手続きで裁判所が開示を判断できるという内容だ。

改正後はプロバイダーを訴えずに済むケースが増え、時間やコストの面で負担が軽減される。通常3~6カ月で消える投稿記録の保全命令も可能になり、被害者の泣き寝入りを減らす効果も期待される。

総合的な対策を

一方、特定までの手続きが東京地裁に集中する問題について、有識者会議が議論を深めた形跡はない。非訟手続が導入されても、問題が解決されるかは不透明で、地方の弁護士からは「被害者の住所地の裁判所にも管轄させるべきだ」との声も上がり、今後の検討課題といえそうだ。

会議メンバーの清水陽平弁護士は「管轄を広げすぎると、専門外の裁判官による審理が増え、かえって時間がかかる。慎重に検討すべきだ」と指摘。その上で「中傷は法規制だけでは対応できない。事業者の意識改革やネットリテラシー教育の充実といった総合的な対策が大切」と訴える。

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