SNSの罠

ネット中傷、止まらぬ被害 事業者規制も決め手なく

フジテレビのリアリティー番組「テラスハウス」に出演したプロレスラー、木村花さん=当時(22)=が昨年5月、会員制交流サイト(SNS)で誹謗(ひぼう)中傷された後に亡くなった問題は、社会に大きな波紋を広げた。匿名性が高いSNSは投稿内容が過激になりやすく、トラブルを招くことも少なくない。花さんの死をきっかけに、SNS事業者が自主規制の強化に乗り出すなど、悪質な投稿を抑止するための取り組みが進むが、実効性は不明瞭だ。

《生きている価値あるのか》《いつ死ぬの》

花さんは「テラスハウス」の出演をきっかけに、ツイッター上などで1200件以上の暴言を浴び、亡くなった。自殺とみられる。

SNS上の誹謗中傷による被害は、後を絶たない。インターネット接続事業者(プロバイダー)のビッグローブが昨年8月に全国の男女千人を対象に実施したアンケートでは、SNS利用者のうち約18%が誹謗中傷の被害を受けた経験があると回答している。

花さんの死を受け、SNS事業者で構成する一般社団法人「ソーシャルメディア利用環境整備機構」は「名誉毀損(きそん)や侮辱を意図した投稿を禁止し、違反者のサービスの利用停止を徹底する」と緊急表明した。ツイッターは昨年8月、投稿に返信できる人の範囲を自分で制限できる機能を追加。ネット掲示板を運営するヤフーが不適切な投稿を人工知能(AI)で検知し削除する取り組みを進めるなど、事業者は対応を模索している。

ただ、総務省によると、誹謗中傷の投稿の削除が年間数十件程度の事業者もあるといい、同省担当者は「各社の対策の実効性はまだ不透明な部分も多い」と指摘する。

一方、中傷の書き込みを見つけても、すぐには発信者に責任を問えないのが実情だ。裁判で損害賠償を求めるとしても、事業者に発信者の情報開示を求めることが不可欠。ただ現行の仕組みでは、開示が拒否されると、事業者を相手取った訴訟も起こさねばならず、泣き寝入りする被害者は少なくない。

総務省の有識者会議は昨年11月、開示の手続きを簡略化する新たな制度案を提示。1度の手続きだけで裁判所が開示を判断できるという内容だ。ネットをめぐる問題に詳しい船越雄一弁護士は「現状では手続きが非常に煩雑な上、莫大(ばくだい)な費用がかかり、被害者の負担があまりに重すぎる。プライバシーの問題があるとはいえ、手続きを見直す必要がある」と指摘した。(桑波田仰太、小松大騎、北野裕子)

子供からお年寄りまで利用できるSNS。世界中の人々とつながることができる便利なツールですが、匿名の人物からの誹謗中傷やデマも飛び交い、ときに犯罪に巻き込まれるリスクもあります。産経新聞はこうした「SNSの罠(わな)」に着目し、どのように向き合えばいいのか皆さんと考えたいと思います。ご意見や情報を募集します。 ikensns@sankei.co.jp までお寄せください。QRコードからでもメールできます。

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