本郷和人の日本史ナナメ読み

再考「鎖国はなかった」論(上) 島国ゆえに成立した独自性

伝足利義政像(模本、東大史料編纂所蔵)
伝足利義政像(模本、東大史料編纂所蔵)

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。和服姿があでやかな女性・おせち料理・お正月のさまざまな伝統行事などを目にしながら、年初の改めての感想としてぼくがつくづくと思うのは、日本はやはり他国とはだいぶ異なる、独特な文化をもつ国だなあ、ということです。日常生活でいや応なく使わねばならぬ今日的な技術と、千年を優に超える伝統文化のはざまにたゆたいながら、ああやはり、この国に生まれてよかったと、心から思っています。

ただ、ここで気をつけなければなりません。それは日本が他国には見られない、唯一無二の文化を保持しているといっても、だから日本は優れている、と短絡してはいけないということです。どの国にも大なり小なりオリジナリティーはあるのです。それを尊重してこそ、日本文化の良さにも敬意を持って接してもらえる。それから日本文化の本質を、ぼくたち自身が認識することが大事ですね。彼を知り、己を知れば百戦して…いやいや。もう、戦争はこりごりですね。

わが国は、「0から1」、従来とは全く異なる「もの」や「考え方」を生み出すことは、あまり得意ではありません。けれども、「1から2」、他国の文物を摂取し、模倣し、さらにそこに工夫を加えてオリジナルを超えるクオリティーを創出することにたけています。表意文字の漢字を使いこなし、それをもとに表音文字の「かな」を作り出したのはその好例です。このような学習と工夫が積み重なって、「日本独自のありよう」が築かれていく。長い歳月を経て、「ただ一つ」の日本文化が姿を現すのです。

そう。良きにつけ、悪(あ)しきにつけ、この国は明治維新まで、「日本独自のありよう」を育んできました。それはつまるところ、日本が「島国であったこと」に由来するとぼくは思います。他国から侵略を受けない。中国文明の一員でありながら、過度な干渉は受けない。加えてまずまず豊かな地理的条件にも恵まれた。温帯に位置していて、とりあえずは温暖な気候。しっかり労働すれば、3千万人分の農作物をもたらしてくれる国土。石油は出ないけれど石炭が採れ、金・銀・銅も産出された。そうした諸要素が、いまの日本を形成していると考えられます。

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