コロナに克つ

衛生的に暮らせる場所へ 避難所にAI技術活用

【コロナに克つ】衛生的に暮らせる場所へ 避難所にAI技術活用
【コロナに克つ】衛生的に暮らせる場所へ 避難所にAI技術活用
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 「アラートが鳴っています。間隔をあけてください」。昨年8月31日、川崎市の市立殿町(とのまち)小学校で行われた、新型コロナウイルス下での避難所運営の実証実験。市の職員は懸命に呼びかけ、人混みを散らした。

 地震や台風などの災害時の避難所は、多くの自治体が学校の体育館や公民館などを指定しているが、限られた空間内での「密閉・密集・密接」は避けられない。実験は同市と東北大災害科学国際研究所、富士通などによる共同プロジェクトの一環で、校内に設置したビデオカメラの映像を、リアルタイムでAIが解析。人の密集度が一定の数値を超えると警告音が鳴る。避難所の受付や市の災害対策本部のパソコンにも、同時にデータが送られる。

 どの避難所に何人が避難しているかという正確な数字は、職員の派遣やその後の支援方法を検討する上で大切な情報だ。従来は電話による報告で、情報が錯綜したり、電話がつながらなかったりしていた。そもそも現場の職員らが対応に追われ、避難者数を把握できない場合もあったという。

 「人数を数えて『密』を把握する作業を機械化できれば、その時間を別の対応にあてられる」と川崎市危機管理室の担当者。将来的には、リアルタイムの避難所の人数をホームページなどで市民に公開し、避難の判断に役立ててもらうことも想定する。

定員オーバー回避

 だが、避難所の密を減らすために収容人数を減らせば、避難してきた人を収容できないという事態が起こりうる。実際に昨年9月、九州を中心に大きな被害が出た台風10号では、福岡県や長崎市などの避難所が定員オーバーとなった。

 そこで注目されているのが「移動式住宅」だ。トイレや浴室、ベッドなどを備えたコンテナハウスなどで、組み立ての手間がない。平成28年の熊本地震では、熊本県益城町がトレーラーハウスを「みなし福祉避難所」として利用。30年の西日本豪雨では岡山県倉敷市でも活用された。

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