話の肖像画

歌手・郷ひろみ(6)一流と「超」一流の違いは

昨年夏には自著「黄金の60代」を出版。インタビューを受ける
昨年夏には自著「黄金の60代」を出版。インタビューを受ける

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《「ストイック」と称される。自身を厳しく律し、禁欲的に己を持するという生き方を貫いている》

僕の中では普通のことを普通にやっているだけなんです。人からすれば苦しいことでも、性格的にやり続けてしまうところはありますけど。前にも話しましたが、苦しさも超えると楽しみになってくる。だからもっと続けようと思うんです。トレーニングも20代の後半、ある人に「ひろみくんの体って、思ったより締まってないよね」といわれたのがきっかけです。僕は何かを始めたり、やめたりするとき、思い立ったら吉日。即実行するタイプなんです。

トレーニングをやり始めたら、体も徐々に絞れてきて、運動と食が関係していることもわかってきた。だから食材や食事も腹八分目とか、よくかんでとか、体のことも考えるようになる。家でも特殊な浄水器を使っていますが、これも体を大切に思えばこそなんです。

休日でも一日中パジャマとか、とにかくダラ~っとしているのがダメ。僕は行動に移すタイプなんです。年だから、70歳だから、80歳だから、と思えば、(まあ、いいかと)自分で自分に(甘えを)言い聞かせてしまう。でも「100歳まで生きるんだ」「もっと現役で頑張るんだ」と思えば、体は何とかなる。背筋も伸びてくるものなんです。

《行動に移すことで、新しい何かを得る》

簡単には手に入らないんですよ、欲しいものは…。時間をかけてじゃないと。簡単に手に入るものは簡単に逃げる。だから簡単に手に入るものに、僕は魅力を感じない。簡単に手に入らないから、それだけ時間をかけて、どう自分自身を変えていくのか。そこに時間をつぎ込んでいくことが大切だと思うんです。

時間は無駄にしたくない。今はお酒もやめて、夜も早めにベッドに入る。以前も飲みに行ったことはあまりなかったですよ。食事のときは飲みましたが、「じゃあ次、行こうか」というのはまずなかった。あれだけ(ステージ上の)いい音で歌っているじゃないですか。だから食後のカラオケなどには、どうもちょっと足が向かないんです。

朝は6時か、7時には起きる。こういう仕事をしている割には早いと思います。毎朝、神棚に水をお供えし、二拝二拍手一礼します。「拝む」は腰を90度に曲げる。手が膝までくれば大体90度になるんです。50年間、歌っている。そこには才能とか、頑張りだけではない。運、ツキもあります。ツキを持っていることも大事なんです。目に見えない何か、それはツキという力なんだよな、と。だから自然と拝んでおこうという気持ちになる。生かされているという感覚。そのツイてるな~という言葉に甘えないことが、拝むという行動になり、それが頑張りに結びついている。

超一流という言葉があります。僕の中で持論があって、(ゴルフの)タイガー・ウッズとか、(バスケットボールの)マイケル・ジョーダンという人たちは、他の人と何が違うんだろう。一流と超一流の違い。それはすべてを兼ね備えていて、さらにツキがあること。ツキは自分に甘えなかった人間に舞い降りる。それをわかっていて、なおかつ努力していった人間が、一流から超一流になれるんじゃないかと思っています。(聞き手 清水満)

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