【鑑賞眼】新橋演舞場「初春海老蔵歌舞伎」 未来の世代育てる場に - 産経ニュース

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鑑賞眼

新橋演舞場「初春海老蔵歌舞伎」 未来の世代育てる場に

「毛抜」に出演する市川海老蔵(松竹提供)
「毛抜」に出演する市川海老蔵(松竹提供)

 今年の東京・新橋演舞場の正月公演は、平成20年から座頭を務める市川海老蔵の名を初めて冠し、「初春海老蔵歌舞伎」と銘打たれた。日本文化を支える未来の世代が活躍できる場にしたいという海老蔵の思いが込められた。昨年はコロナ禍で十三代目市川團十郎白猿の襲名が延期となり、海老蔵にとって東京での本興行は、昨年1月の「初春歌舞伎公演」以来となる。

 「歌舞伎十八番」の一つ「毛抜(けぬき)」で粂寺弾正(くめでらだんじょう)を勤めた海老蔵。花道から登場すると劇場の空気が一瞬で華やぐのは、海老蔵の持つオーラがなせる業。大胆な色柄の衣裳にも負けない顔立ち、そしてその目力。とにかく歌舞伎の舞台に映える。

 京の五條橋での弁慶と牛若丸の出会いを描いた舞踊作品「橋弁慶」では、海老蔵が武蔵坊弁慶、長男の堀越勸玄が牛若丸を勤め、親子で共演。衣裳のせいか海老蔵が一回り大きく見え、荒くれ者の弁慶らしさを醸し出していた。

 最後に、主従三世の契りを交わし、牛若丸が花道を去っていく後ろ姿を見守る弁慶(海老蔵)の目に涙が浮かんで見えたのは、私だけだろうか。未来の十四代目團十郎のまだまだ小さな背中だけれど、何だかとても頼もしく見えた。海老蔵もそんな思いで倅(せがれ)の後ろ姿を追っていたのかもしれない。

 女方舞踊の代表的作品「藤娘」で、藤の精を勤めた海老蔵の長女、市川ぼたん。記者会見ではいつもしっかりと受け答えをしていて、お姉さんらしく優等生っぽくもある。舞台にも、そんな雰囲気が出ていた。

 まだ9歳ということで「藤娘」のように恋をしたり、つれない男心にやきもきしたり、といった経験はまだないだろう。5年後、そして10年後にまた、「藤娘」を踊る市川ぼたんを同じ舞台で見たいと思った。歌舞伎公演の舞台に女性が演者として立つことに賛否両論あるかもしれないが、舞踊ならぎりぎりセーフかも。

 劇評家とは異なり、海老蔵一家についてはついつい観客目線で、温かく見守るいちおばさんと化してしまう。海老蔵が仕掛ける「初春海老蔵歌舞伎」の今後が楽しみだ。

 1月3~17日、東京都中央区の新橋演舞場。チケットホン松竹0570・000・489。(水沼啓子)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。