衝撃事件の核心

憔悴の被害者が「人の命奪うのと同じ」と語る取り込み詐欺

 府警によると、藤田被告のグループは三建商事を含む4つの休眠会社の登記を使い、詐欺で得た家電製品や食品を転売していた。33社が被害に遭い、被害総額は昨年末時点で約1億3600万円に上る。

 府警はだまし取った商品と知りながら買い取ったとして、卸売会社「T・P・M」社長の佐藤紳一朗被告(45)=盗品等有償譲り受け罪などで起訴=らを逮捕した。詐欺で得た金は藤田被告から特定抗争指定暴力団山口組系組長にも流れていた。

 「相手を信頼して取引した心も裏切られた」と男性は憤る。一緒に働く父は憔悴(しょうすい)し、しばらく仕事が手につかなかったという。「詐欺で人生が狂わされる人もいる。場合によっては、死に追い込まれるかもしれない。人の命を奪うのと同じくらい重い罪ですよ」

一般企業も手を染める可能性

 取り込み詐欺の被害は、他にも各地で相次いでいる。大手信用調査会社の元取締役で、現在は企業のリスク管理を研究する高市幸男さんは「今回の事件のような詐欺グループだけではなく、経営難の一般企業が行う場合もある」と指摘。コロナの影響で苦境に陥った会社が取り込み詐欺や計画倒産などに手を染めている可能性もあるといい、「被害を受けた企業も信用をなくすことを懸念して警察に相談しないことが多い。水面下で多くの取り込み詐欺が起きているのではないか」と話す。

 被害を防ぐには取引先の入念な調査が不可欠だが、一般企業、特に中小企業にとっては難しい。今回の詐欺で使われた三建商事の登記は、21年に警視庁が摘発した取り込み詐欺グループも使用していた。高市さんは「登記は単なる器。犯罪に使われても無傷で残る」とした上で、「手間はかかるが、最新の登記だけではなく何年か遡(さかのぼ)ってみると、頻繁に役員や本社所在地、事業目的が変わっているなど不審な点が見つかることもある」とアドバイスしている。