浪速風

晶子も問うた政府の対応

4日は例年なら仕事始めだが、今年はまだ冬休みの人も多そうだ。丑年はゆっくり、ぼちぼちいきたい。「伝染性の急激な風邪の害は(中略)大多数の人間の健康と労働力を奪うもの」と書いたのは大阪・堺出身の歌人、与謝野晶子だ。大正時代、スペイン風邪と呼ばれた感染症が流行していた

▶健康はもちろん、労働力も奪う-と指摘したのは論理的な評論でも知られた晶子らしい。現代のようにリモートワークで…とはいかなかった当時、さらにやっかいだったろう。人の移動とともに広がる伝染病は、経済活動とは対極にある

▶常にモノ言う人だったから、政府の対応を痛烈に批判した。いわく、政府はなぜ「大呉服店、学校、興行物、大工場、大展覧会等、多くの人間の密集する場所の一時的休業を命じなかったのでしょうか」と(「感冒の床から」)。ちょうど100年ほど前のことだが、そっくりそのまま、現代も政府の対応が問われている。

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