イラン司令官殺害から1年 保守強硬派台頭で対米関係悪化

ベイルートのイスラム教シーア派地区に掲げられたソレイマニ司令官の看板=2020年12月22日(共同)
ベイルートのイスラム教シーア派地区に掲げられたソレイマニ司令官の看板=2020年12月22日(共同)

 【カイロ=佐藤貴生】イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官が米軍に殺害されてから3日で1年となった。イランは報復は限定的なものにとどめたが、国内では反米の保守強硬派が台頭して対米関係は悪化し続けた。次期米大統領就任を確実にしたバイデン前副大統領はトランプ政権が離脱したイラン核合意に復帰すると表明、対話を模索する意向だが、先行きは不透明だ。

 イランの首都テヘランで1日に行われた殺害1年の式典で、コッズ部隊を率いる後継のガアニ司令官は「抵抗の道を歩み続ける」と述べ、改めて米国に報復する決意を示した。

 ソレイマニ司令官は昨年1月3日、イラクの首都バグダッドで米軍の無人機攻撃により死亡した。イランは同8日、イラクの駐留米軍基地に弾道ミサイルを撃ち込んで報復したが、イラク側に事前通告したとされ米兵に犠牲者はなかった。

 イランと米国の間では緊張が続く。先月20日にバグダッドの米国大使館近くに多数のロケット弾が撃ち込まれた際、トランプ大統領はイランが仕掛けたとして、「米国人が1人でも殺害されたらイランの責任だ」と報復を示唆した。

 イランでは司令官殺害後の昨年2月、国会選で反米の保守強硬派が全議席の7割超を確保。欧米との対話に前向きなロウハニ大統領らの求心力は急落した。

 昨年12月には核合意で規定する国際原子力機関(IAEA)の査察を拒否し、ウランの濃縮度を20%に高めるよう求める法律が成立。この段階になると核兵器転用可能な90%への引き上げ作業が容易になる。

 バイデン氏はイラン側の核合意順守を条件に合意に復帰する意向で、イランが核開発を拡大すれば実現は困難になる。同国を敵視するイスラエルも米の合意復帰に懸念を示している。

 イラン指導部は司令官殺害を国民の結束に利用しており、今年6月の大統領選で保守強硬派の大統領が誕生するとの見通しがある。そうなればイランが米国との対立を強めることは確実で、バイデン氏が関係改善に動くのは難しくなる。

会員限定記事会員サービス詳細