古典個展

大阪大名誉教授・加地伸行 国民的課題は国防

魚釣島周辺=2011年10月、沖縄・尖閣諸島(鈴木健児撮影)
魚釣島周辺=2011年10月、沖縄・尖閣諸島(鈴木健児撮影)

 謹賀新年。

 コロナ大禍。今なお大変である。しかし、時は過ぎゆく。好むと好まざるとにかかわらず、新しい流れに関わらざるをえない。それも国民的課題とあれば、観念的議論に留(とど)まらず、同時に経済的配慮が生じる。

 それも、単なる観念論、単なる物的問題ではなくて、そこに国民の求める真剣さがある。

 では、今、どういう国民的課題がわれわれの前にあるのか。

 それを考えるには、これまでどういう国民的課題の歴史であったのか、振り返ってみる。

 敗戦そして米軍占領期を終えて、日本が国家としての独自の生き方をする中心となったのは<高度経済成長>であり、その成功とともに経済的自信を得ていった。

 その豊かさの半面、<差別>が国民的問題として現われ、例えばその住宅関連面などにおいて、大きな前進があった。

 その後、<福祉>が国民的関心事となり、福祉施設面において相当な充実があった。

 すなわち、国民的思想問題の議論とともに、それと連動して経済面での展開があった。

 それはそうである。空念仏(からねんぶつ)で事態は変わらない。国民の大いなる意志は必ず大いなる経済的展開を呼び起こして実質化してゆく。それは政治の力である。

 では、<高度経済成長・差別解消・福祉充実>と来たその次の国民的課題とは何なのか。

 老生、明言する、<国防>と。今の日本の状態は、天国と言っていい。働こうと思えば、必ず職はある。病気になっても社会保険がある。住居も求めに応じて必ずある。しかも治安は世界最高。他国から見れば、まさに地上の天国である。

 となると、日本の富を奪おうと思う他国が現われるのは当然であろう。そのように覚悟するのが一級の政治家である。そのような優れた政治家に対して国防の推進をぜひお願いしたい。

 とりわけ、離島防衛である。例えば中国は、自国から世界にコロナウイルスを拡散させておきながら、火事場泥棒のごとく、尖閣諸島周辺への領海侵入を繰り返している。もはや、わが国の実効支配は風前の灯(ともしび)。

 しかし、自衛隊の拡充となると、野党が、反対のための反対をするので時間の浪費に終わりかねない。政権与党も、かの国の顔色をうかがって自衛隊部隊の駐屯をためらい、ただ口先だけの抗議を繰り返すのみ。

 ならば老生、改めて提案したい。自衛隊が無理ならば、せめて離島の管理・防衛を担う新たな公務員を創設して配置せよ。狙われているのは尖閣だけではない。主要な離島に、こうした公務員を配置すべし、と。

 彼らは海洋の資源管理も担当する。やがて来たる世界的な食糧争奪戦の中心は海洋になる。そのときに慌てて乗り出しても、もうそれは遅い。食糧問題は待ったなしだからである。いざ力ずくとなれば、瀬戸内海の離島でも危ういのである。

 『史記』高祖本紀(こうそほんぎ)に曰(いわ)く、籌策(ちゅうさく)(計略)を帷帳(いちょう)の中(うち)に(部屋に)運(めぐ)らし、勝ちを千里の外(そと)(遠方の地)に決す、と。(かじ のぶゆき)