代替肉の需要増に畜産業界が危機感、敵対する自然派食品の支持者たちと手を組んだ理由

環境面でも問題がある。米国では、畜産場からの排水が河川を汚染しており、五大湖のひとつであるエリー湖や、ワシントンD.C.の東にあるチェサピーク湾などの水質を悪化させている。畜産業界はまた、地球温暖化の原因である温室効果ガスを大量に排出しており、その量は世界全体の15%近くを占めている。

もし植物由来の代替肉が本物の肉にとって代わるようになれば、こうした問題はどれも軽減するかもしれない。ファッション業界では、本物の動物の毛皮の代わりにフェイクファーが使われるようになり、靴は人工皮革でつくられるようになった。人工象牙は象の保護に役立っており、代替卵や代替乳製品は商業的な成功を収めている。植物性ミルク(アーモンドミルクやオーツミルク、豆乳、ココナッツミルクなど)は、いまでは米国のミルクの売り上げ全体の14%を占めるまでになった。同じように、植物由来の代替肉を使ったバーガーが今後10年間で本物のひき肉にとって代われば、数多くの重要目標を達成する方向へと変化が起きる可能性がある。

自然食品派 vs. 植物由来の代替肉

このような貴重な可能性が秘められているにもかかわらず、フードムーブメントを率いるリーダーの大半は植物由来の代替肉を拒絶してきた。植物由来の原材料からつくられたバーガーには化学物質が加えられているので、可能な限り未加工で添加物も含まれていない従来からの「自然食品」を求める人の嗜好には合わないのだ。

『ニューヨーク・タイムズ』の元グルメジャーナリストで、フードムーブメントの著名な代弁者であるマーク・ビットマンも、同じ理由で代替肉を非難している。「いろいろな粉を混ぜてまがい物の肉へと生まれ変わらせることが、よいことだとは思えません。リアルな食こそが究極のゴールですが、代替肉が人々をその方向へと導くことはないでしょう」

進歩主義的なフードサービス企業と小売店も一緒になって、植物由来の代替肉を批判している。メキシコ料理チェーンのチポトレ(Chipotle)の最高経営責任者(CEO)ブライアン・ニコルは、同チェーンでは「加工されている」植物由来の肉は提供しないと語っている。

高級自然食品スーパーのホールフーズ・マーケットのCEOのジョン・マッキーも、ビーガンでありながら代替肉に対しては否定的な反応を示している。「原材料を見てください。(代替肉は)驚くほど手が加えられた加工食品なのです」

畜産業界は現在、フードムーブメント支持者が加工や添加物に関して繰り広げるこうした批判を借りて、植物由来代替肉の普及を遅らせようとしている。食肉業界、外食産業、アルコール業界を代表する非営利団体「センター・フォー・コンシューマー・フリーダム(CCF)」は2019年10月、『ニューヨーク・タイムズ』に掲載した全面広告で、読者に対してこう警告した。

「代替肉は極端に加工された代替食品です。増粘剤のメチルセルロースや着色料の二酸化チタン、酸化防止剤のt-ブチルヒドロキノン、化学合成されたうまみ成分のイノシン酸ナトリウムなど、さまざまな材料が含まれています」

つまり、代替肉は「本物の化学物質」が含まれた偽物だと主張したのである。

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