【オリパラ×デザイン】(上)桜の炎よ、希望の光に 吉岡徳仁さん - 産経ニュース

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【オリパラ×デザイン】(上)桜の炎よ、希望の光に 吉岡徳仁さん

聖火トーチを手にしたデザイナーの吉岡徳仁さん。トーチは上部から見ると、桜の花びらの形となるようにかたどられている(三尾郁恵撮影)
聖火トーチを手にしたデザイナーの吉岡徳仁さん。トーチは上部から見ると、桜の花びらの形となるようにかたどられている(三尾郁恵撮影)

 開催が延期された東京五輪の聖火リレーが今年3月25日、福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)でスタートする。聖火トーチをデザインした吉岡徳仁さん(53)は、トーチが太陽の光で輝くよう工夫を凝らしたという。新型コロナウイルス禍で、社会には閉塞感が漂っている。吉岡さんは五輪イヤー元日に向けたインタビューで、青空の下でランナーがつなぐ聖火リレーが「希望の力になれば」と語った。(飯嶋彩希)

 --トーチ製作を振り返って

 「もともと、東日本大震災の被災地のために何かをしたいと考えていた。震災後は日本人の助け合う姿があり、そんな思いを込めてトーチを作りたかった。逆境の中でこそ私たちには希望の光が必要だ。コロナ禍だからこそ意味のあるデザインかなと思う」

 --色や形について

 「日本を象徴する桜をデザインに取り込みたかった。桜そのものではなく、桜の炎を表現したかった。日本らしい炎を実現するためには桜の形だと行きつき、過去のトーチとは逆のプロセスで製作した」

 --復興住宅の資材や環境配慮の素材を使っている

 「今、ものづくりは環境が重要なキーワードだが、根本的に物を大切にすること、『もったいない』という気持ちが大切だ。被災地の復興住宅が役目を終えるところでタイミングよく素材に用いることができた」

 --製作までの過程は

 「長い年月をかけて、最初は『トーチとはどんなものだろう』というところから始まった。革新的なものを作りたかったが、技術的に可能かどうか、一つ一つ検証していく作業だった。『作り方をデザインする』をキーワードに、完成まで何度も作り直した」

 --昨年3月のギリシャの採火式はどう見たか

 「自宅で中継を見ていた。トーチの心配よりも、安全に(リレーが)できるといいなと。デザインすると観客の一人になって見てみたい気持ちになる。(その後、五輪延期が決まって)正直ほっとした。聖火リレーは世界中の人が楽しみにしてくれているもの。安全でなくてはならない。そして、楽しめるような環境でないといけない」

 --五輪の聖火とは

 「逆境だからこそ、希望の光のような、ぽんと一歩前に出て空気を変えてしまうものが必要。それが聖火リレーなのかは分からないが、今は一つの地球の中で一つの大きな問題を抱えている状況にある。人生にはたくさんの困難がある。限界に立ち向かうスポーツ選手を見て頑張ろうと思えるのは素晴らしいこと。ものづくりでも感動するプロセスが重要で、自分の感情を揺さぶることでデザインに落とし込んでいる」

 --コロナ禍での五輪開催と安全確保は難しい

 「安全は大前提としてあるもの。医療従事者の働きによって私たちは日常生活が送れている。ただ、太陽の下で光り輝くトーチを見てみたいという思いはある。2020年は誰にとっても記憶に残る一年になった。(ふたたび聖火リレーの)機会をいただけたのは光栄なことだ。妥協は一切せず、(トーチの)歴史を超えられるものを、アスリートの方々と同じ熱量で生み出したかった。無事に皆さんがごらんになる中で、輝きを放ってほしい」

 よしおか・とくじん 昭和42年生まれ。佐賀市出身。桑沢デザイン研究所(専門学校)卒。デザイナーの倉俣史朗氏、三宅一生氏の下でデザインを学び、平成12年に吉岡徳仁デザイン事務所を設立。代表作のガラスのベンチ「Water Block」はパリのオルセー美術館に常設展示されている。

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