正論2月号

司法も事実認定した 元朝日記者の「ねつ造」 本誌編集部 安藤慶太

 さらに金氏は、その後の月刊誌や裁判で「母親によってキーセンの検番に売られた」(韓国紙報道)や「養父」「継父」「義父」に連れられて慰安婦になった、と説明している。女子挺身隊として日本軍によって無理やり連行され、慰安婦にされたとは話していなかったのである。

 朝日新聞は平成二十六年八月になって、女子挺身隊と慰安婦との混同を認めた。ただし、これは言葉の「誤用」によるもので、意図的な事実の捻じ曲げなどはなかった、とも述べている。これに批判が高まり、朝日は同年十二月に「この女性が女子挺身隊の名で戦場に連行された事実はありません」と誤りを認めた。

 ところでこの記事が報じられたことにどんな意味があったのだろうか。

 まず、朝日新聞は昭和五十七年に「軍の命令により朝鮮で若い女性を慰安婦にするために自身が強制連行した」とする吉田清治氏の証言を他紙に先駆けて報じた。これは日本軍による「従軍慰安婦の強制連行」という「虚偽」報道の幕開けだった。

 のちに朝日は「吉田証言」を虚偽と認め、平成二十六年に記事を取り消したが、一九九二年に韓国政府がまとめた「日帝下軍隊慰安婦実態調査報告書」、九六年に国連人権委員会の「クマラスワミ報告」、九八年の「マクドゥーガル報告書」などで「慰安婦強制連行」の証拠として「吉田証言」は採用され、今も修正されていない。

 ただ、「吉田証言」は報道された当時からその信憑性を疑問視する向きが根強くあった。「強制連行」したとする側の証言は報じられたが、「された」側と

なる慰安婦の証言などが全く出てこなかったからである。

 植村氏自身も、記事の前年に韓国で現地取材をやっている。当時の朝日報道の流れを追うと、八月十一日の「記事」には、いま一つ事実というには薄弱と言わざるを得ない「加害者」である吉田氏の「慰安婦の強制連行」証言を、「被害者側」から内容的に裏づけることで、確固とした事実と認められるという構図が見えてくる。

 朝日新聞が展開してきた「慰安婦の強制連行」報道(現在は、広義の強制性があった、と言い換えている)は「吉田証言」と植村氏の記事を土台にし、これが事実であるという前提のうえに立脚し、繰り広げられたものだった。

■「事実は物語る」

 櫻井氏と西岡氏は記事を書いた植村氏を批判し、朝日新聞の報道姿勢にも疑義を呈した。この記事が「誤用」などではなく、作為に基づく意図的な「捏造」だったと批判したことから、植村氏が訴訟を提起してきた。

 通常、名誉棄損の裁判を提起された場合、訴えられた側は、自分の書いた記述が事実であることを取材内容に基づき立証しなければならない。そのうえで記述が▼書かれた側の社会的評価を低下させるものか▼書かれた記述が真実もしくは真実と信じるに足るものか(真実・真実相当性)▼書かれた記述に公益性、公共性があるか-などが吟味されていく。

 真実性が認められることは、記述内容を裁判所が真実だと認めたことを意味する。これに対して真実相当性は、「真実であるかどうかはともかく、そう信じるに足る相当の理由があった」というもので、いずれも名誉棄損は成立しない。

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■「正論」2月号 主な内容

<スクープ>武漢ウイルス発生から1年 中国の「隠滅」指示全文 「財新」恫喝文も入手 本誌編集部

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