チンパンジー研究の世界的権威らが陥った不正経理の温床

 過度な依存関係が進み、不正経理に関わった教員の中には「窮状を訴える業者に対して何とかしてあげたかった」と供述する人もいたという。

業者「埋め合わせ約束」

 一方、京大側の説明に納得しないのが、霊長研と30年以上の付き合いがあった業者の元社長(68)だ。

 元社長によると、松沢氏らは犬山市のケージ1基の整備工事に3億2千万円の予算が配分されたが、別業者が予算額を大幅に下回る価格で落札したため、余った約1億2千万円でケージをもう1基整備することを検討。元社長に予算に合う見積書の策定を依頼したが、仕様変更を繰り返すうちに、見積額が予算を大幅に上回る事態となった。

 元社長は「予算内での工事は困難」と松沢氏に告げたが、「研究所の予算は今後数年間にわたって潤沢にある」「後で埋め合わせるから」と説得され、赤字受注は避けられないと分かりながらも応札に踏み切ったという。その後も「埋め合わせ」への期待から、予想される工事費用を下回る金額で熊本県のケージ2基の工事も落札。結果的に総額5億円超の赤字を抱えることとなった。

 その後、架空取引などで赤字の一部は埋められたが、残る大半の支払いを求めると「松沢氏らは『約束した覚えはない』『請求に全く根拠がない』と態度が一変した」という。平成27年にはこの業者側が、総額約5億円の赤字の賠償を求めて京大と松沢ら2人を相手取り、東京地裁に提訴したが、地裁は請求を棄却、29年11月に東京高裁で控訴が退けられ敗訴が確定し、業者は昨年5月に倒産した。

 取材に対し元社長は「長年の信頼を裏切られた気持ちだ。京大と松沢氏には、何があったのか、世間に正直に打ち明けてほしい」と話している。