鑑賞眼

猿之助初監督、図夢歌舞伎「弥次喜多」 舞台のような映画のような面白さ

図夢歌舞伎「弥次喜多」12月26日よりレンタル独占配信中(C)松竹
図夢歌舞伎「弥次喜多」12月26日よりレンタル独占配信中(C)松竹

 江戸時代の滑稽本「東海道中膝栗毛」(十返舎一九)に登場する弥次郎兵衛と喜多八、通称弥次喜多を、松本幸四郎と市川猿之助コンビで平成28年から毎年夏に東京・歌舞伎座で上演してきた弥次喜多シリーズ。その最新作は、オンライン用の映像作品「図夢歌舞伎『弥次喜多』」として制作された。

 今回は、作家・演出家の前川知大(まえかわ・ともひろ)が21年に上演したパンデミックを題材にしたSF群像劇「狭き門より入れ」をもとに、猿之助が監督・脚本・演出を担当。出演は幸四郎、猿之助のほか市川中車(香川照之)、市川染五郎、市川團子、市川猿弥、市川笑三郎、市川寿猿、市川弘太郎(声の出演)。

 最新作は、万屋(よろずや=コンビニ)「家族商店」を舞台に、弥次郎兵衛は出世して歌舞伎座の経営再建担当になったものの追い出され、喜多八は弥次郎兵衛によって歌舞伎座をリストラされ「家族商店」の店長として働いているという設定。流行中の謎のウイルスによる不況でみな以前とは違ってしまう。

 原作と同様、世界がリセットされ、選別された人だけが新しい世界へいけるという「世界の更新」が核となっており、かなりシリアスで重い内容だ。

 もちろん弥次喜多らしく、猿之助や中車が出演している某テレビドラマを連想させる演出が施されていたり、梵太郎(染五郎)や政之助(團子)がヤンキー風の扮装で出演したり、と笑いも盛り込まれている。

 オープニングやエンディングは、映画のような作り。しかもオープニングとエンドロールに流れる出演者の名前は英語表記になっており、「世界配信をしたい」という猿之助の思いが具現化した形だ。

 初監督作品を手掛けた猿之助は、この作品を通して「果たして今われわれが生きている文明というのは、本当に正しいのか。自分たちの生き方は正しいのか。こんなに地球をめちゃくちゃにして、疫病が流行って、これって人災ではないかと。このままだと本当に滅びるぞということを考えて欲しいと思った」という。今回の弥次喜多は、猿之助の世界観が詰まった作品に仕上がっている。

 「Amazon Prime Video」で、国内独占レンタル配信中。レンタル料金1900円(税込)。※Amazonアカウントへの登録が必要。

 (水沼啓子)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。