主張

ゴーン被告 逃亡1年改めて断罪する

 特別背任などの罪で起訴された日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告が保釈中に不法に逃亡して1年となる。

 逃亡先のレバノンで、ゴーン被告は悠々自適の生活を謳歌(おうか)しているとされる。一方で、日本の刑事司法制度に対し、罵詈(ばり)雑言に近い批判を繰り返している。

 ゴーン被告は昨年12月29日、楽器の箱にこそこそと隠れてプライベートジェットで密出国し、レバノン到着後のおおみそかに発覚した。日産に多大な損害を与えた罪で公判の被告席にいなければならなかった立場を無視して身勝手な言説を世界中にまき散らしている現状は、到底許しがたい。

 日本には「盗人にも三分の理」ということわざがある。悪事にもそれなりの理由があるといった意味だが、ゴーン被告にはむしろ、悪事を働いた側がずうずうしく居直るさまを指す「盗人猛々(たけだけ)しい」の方がふさわしい。

 1月にレバノンで開いた会見では、一方的に日本の司法制度を批判した上で「制度が変わらない限り外国人は誰も日本へ行くことを勧めない」とまで述べた。

 当時の森雅子法相はすぐに「旅券を提示せず不法に逃亡したのは子供たちにも説明できない信義にもとる行為だ」と反論し、ホームページに日英仏語で掲載した。

 国連人権理事会の作業部会は11月、ゴーン被告の日本での刑事手続きについて「恣意(しい)的な拘禁」に当たるとする意見書を公開した。外務省は「日本の刑事司法制度にかかる正確な理解に基づかず、大変遺憾だ」として異議を申し立てた。法的拘束力のない意見書ではあるが、放置せず、その都度反論することが重要である。

 ゴーン被告はレバノンで自らを英雄に仕立てた自伝を執筆し、映画製作を進めているとされる。一方で彼の逃亡のために雇われた元米陸軍特殊部隊員親子は米当局に拘束され、日本への移送手続きを進めている。

 仏当局はゴーン被告の会社資金不正使用の疑惑で、予審判事が来年1月からレバノンで事情聴取を開始すると伝えられる。

 国際刑事警察機構(ICPO)によって国際手配されているゴーン被告の活動範囲は、今後も次第に狭められていくだろう。日本政府は粘り強くレバノン側に身柄の引き渡しを求め続け、断罪の姿勢を崩さぬことが肝要だ。