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新型コロナウイルス禍の中での年の瀬に、医療体制の逼迫(ひっぱく)が続く大阪府内では高齢者施設が警戒を強めている。一歩間違えれば施設内で感染が広がる恐れがあり、重症化しやすい高齢者と向き合う職員には介護と感染症対策の二重の負担がのしかかる。クラスター(感染者集団)発生を経験した施設関係者は、ウイルス侵入を阻止する難しさを語った。(吉国在)
「音もなく忍び寄ってくる恐怖感がある」。介護老人保健施設「はーとぴあ」(大阪府守口市)施設長の医師、大野悦子さんは、新型コロナの感染力をこう表現する。
職員約130人が勤務する同施設の利用定員は入所と短期滞在で計100人、日帰りのデイケアが80人。約90人の入所者の平均年齢は85・9歳だ。
施設で初めて感染が確認されたのは11月16日。約1週間前にデイケアを利用した高齢者だった。翌17日には2人目の感染が判明。この高齢者と同じ日にデイケアを利用後、短期滞在もしていた利用者だった。
施設は4階建てで、短期滞在者は入所者がいる2~4階を使う。感染拡大を懸念した同施設は、すぐ新規の受け入れを停止。職員と利用者を複数回にわたり一斉検査した結果、検査人数は延べ約550人に上り、利用者5人と職員1人の計6人の感染が判明し、うち利用者2人が亡くなった。
これまでも消毒や換気、マスクの着用、職員の研修は行っていた。大野さんは「亡くなった利用者の方に申し訳ない」と悔やむ一方、「外部から利用者を受け入れている以上、ウイルスの侵入を完全に防ぐのは難しい」と限界を認める。