【ワシントン=黒瀬悦成】次期米大統領への選出が確実となった民主党のバイデン前副大統領は28日、東部デラウェア州で次期政権の外交・安全保障チームとオンライン形式で会合した後、外交政策方針に関する演説を行った。バイデン氏は「競争相手」である中国に「不公正貿易や技術、人権侵害などの問題で責任を負わせる」と述べた上で、「同盟・友好諸国と共通の利益と価値観を守る必要がある」と指摘し、同盟諸国と連携して中国に対抗していくと訴えた。
バイデン氏は、同盟諸国との結束を強化すれば「米国の立場は一層強固になる」と強調。米中間の懸案として、インド太平洋地域の安全と繁栄の確保、米国の労働者や知的財産の保護などを挙げた。
ロシア政府傘下のハッカー集団が実行したと疑われている米政府などへの大規模なサイバー侵入問題では、「新たな領域で高まる脅威への守りを固めなければならない」と語った。
バイデン氏は一方、政権移行手続きについてトランプ政権から満足できる協力がなく、「安全保障分野での重要な情報が得られていない」と不満を表明した。特に、国防総省と行政管理予算局(OMB)でトランプ大統領に政治任用された高官による引き継ぎの妨害が目立つと指摘し、「これは責任放棄にほかならない」と非難した。
バイデン氏はまた、政権移行チームは全世界に展開する米軍の態勢や活動、国防総省の予算計画などについても説明を受ける必要があるとしたほか、ロシアによるとみられるサイバー攻撃に関連し、「政権移行期に敵に隙を与えてはならない」と強調した。
これに対し、ミラー国防長官代行は28日の声明で「国防当局者たちは高い職業意識で引き継ぎ作業を遂行している」と反論した。