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「やさしい風の吹くまち」を掲げ、風力発電事業に取り組む鳥取県北栄町で、風車の建て替え計画が暗礁に乗り上げている。運転している風車9基の耐用期限が2年後に迫る中、町は事業継続の前提となる新風車関連の予算案を町議会に3度提出したが、いずれも否決されたのだ。累計4億円以上を繰り出して町財政を潤し、環境施策のシンボルにもなっている看板事業。9月からの「すったもんだの議論」では何が問題視されたのか。
予算案を3度否決
12月議会に町側が提案した予算案に盛り込まれたのは、風力発電が生み出す電力を買い取るため、中国電力が実施する工事の負担金3300万円。負担金の拠出は、国の「固定価格買い取り制度(FIT)」の認定条件となる。採決が行われた同16日の本会議では、議長を除く議員14人のうち8人が反対討論に立った。
「新風車の建設費は47億円。財政のか細い町にはリスクが大きすぎる」「子や孫に大きな負担を残すことがあってはならない」「町民の健康や景観に影響し、不安材料が大きい」
こうした声のほか「(計画の賛否を問う)住民投票だってできた。すべてが遅すぎた。駆け込み予算に正当性はない」と不信感をあらわにする議員もいた。
採決の結果は、賛成5に対し反対9。9、10月議会に続く3度目の否決となった。2日後の18日に迫っていたFIT申請の締め切り日を前に、町が描いた計画は白紙となった。
かみ合わぬ議論
実は、ある議員が反対の根拠とした47億円もの建て替え費用は、FIT申請を前提とした試算段階の数字だった。建て替え後の事業採算性を考えると、市場価格よりも高値であるFIT価格での売電が望ましい。そこで風車建て替えの是非に関する判断を先送りし、まずは申請をしておくというのが町の考えだった。