大阪府と大阪市は28日、副首都推進本部会議を開き、市の広域行政を府に一元化する条例案について議論した。来年2月の府市両議会での可決を目指す大阪維新の会は「府市の二重行政をなくすルール作り」を強調するが、住民投票を行わずに実現できる大阪都構想の対案に各党は警戒感を隠さない。来年行われる次期衆院選に向けて、新たな政局の火種となる可能性もある。
「11月の都構想の住民投票で府市一体の方向性まで否定されたわけではない。大阪市を残しつつ、大阪の成長を前に進めるための次善策だ」
ある維新市議は条例化の必要性についてこう語る。
維新が広域行政の一元化を目指す背景には、二重行政の解消を恒久的な制度として実現する都構想に代わり、ルールとして担保する狙いがある。
吉村洋文知事(維新代表)は同日、記者団に「昔(の二重行政)に戻ることがないように条例化することが最低限必要だ」と述べた。
条例案可決の鍵を握るのは、都構想推進派として維新と共闘した公明党だ。維新は府議会で単独過半数の議席を持つが、市議会では過半数に満たないため、公明の協力に期待を寄せている。
だが、公明市議団の西崎照明幹事長は「賛成するかどうかは、あくまで条例案の内容次第」として慎重な姿勢を崩さない。現状の最優先課題は新型コロナウイルス対策と改めて主張し、「住民に説明できない内容なら、修正しないといけない」と語った。
日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)は、公明が一元化条例案などに反対する場合、衆院選で公明現職がいる府内選挙区に対立候補を擁立する可能性を示唆。これに対し、公明は国政で連携する自民党との関係修復を急いでいる。
都構想反対派は一元化条例案に反発する。自民市議団の北野妙子幹事長は「地方自治の観点からみれば、府への権限移譲は分権の流れに逆行する」と指摘。この日の副首都推進本部会議で「まちづくり」が一元化の検討対象とされたことについて「まちづくりの権限を失った都市とは一体何なのか」と疑問を呈する。
共産党市議団の山中智子団長は「住民投票の結果を受け止めず、広域行政の一元化を民意とするのは論理のすり替えだ。大阪市の自治権や主体性をどう考えているのか」と批判した。