朝晴れエッセー

実家に戻ってきた意味・12月28日

コロナで私の日常は大きく変わった。仕事もままならず同棲(どうせい)も解消。実家に戻らざるを得なくなった。結局仕事も辞め、ショックでしばらく寝込むはめに。一日中わが身に降りかかった不幸を嘆いては、家族を心配させた。

負の感情を出し尽くし、もう言葉も出なくなったころ、私は実家に戻ってきた意味を考えるようになっていた。

布団から起き上がれない私を、母は甲斐甲斐(かいがい)しく看病してくれた。何かひと口でも食べれば大喜びする母の姿を見て、ありがたい気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。こんな気持ちはいつぶりだろうか。

思い返せば、母とゆっくり話したこともなければ、ふたりで買い物に行ったこともなかった。いろいろ気持ちが空回りして、いまいちわかり合えていなかったのだ。そうして心に溝を作っていったが、それでも無難に暮らしていた。私はそれを平穏だと思い込んでいたのかもしれない。

そう考えたときに、実家でやり残したことがまだある気がして、気付けばそばで支えてくれる母とふたり、時間も忘れて話し込んでいた。子供のころの話に始まり、少しずつ心のすれ違いの核心に迫っていく。あのとき傷付いたこと、言いたかったことなどを思い思いに話しては、ひとつひとつに耳を傾けた。

「今からでもまだやり直せるかな」

母からそう言われて、私が実家に戻ってきた意味がわかった気がした。

古澤眞帆(27) 奈良県生駒市