安倍晋三前首相は25日、衆参両院の議院運営委員会に出席し、自身の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会の費用を補填(ほてん)した問題をめぐり、質疑に応じた。
首相経験者が答弁の誤りに関して国会で説明するのは、極めて異例の対応だ。
安倍氏は、国会で事実と異なる答弁をしてきたことについて、「私が知らない中で行われていたこととはいえ、道義的責任を痛感している。全ての国会議員に心から深くお詫(わ)びする」と陳謝した。
政治資金収支報告書への不記載については、「結果として事実に反するものがあった。改めて事実関係を説明し、答弁を正したい」と述べた。
事実を知らされていなかったとしても、現職首相のお膝元で政治資金規正法違反となる不記載が4年分にもわたって続いていた責任は重い。不起訴とはなったが、丁寧な説明が求められる所以(ゆえん)だ。
前日の記者会見と同様、安倍氏自身と事務所の不実について、国会という国権の最高機関で謝罪した。ただ国会で少なくとも118回以上にわたり、事実と異なる答弁をしてきた。
これについて、どの部分をどう訂正するかについての具体的な言及がなかったのは問題だ。
野党の質問はホテルの領収書と明細書に集中した。解せないのは安倍氏がこれらをなぜ、自ら確認しようとしなかったかだ。
首相が政府のトップとして多忙を極めるのは分かる。だが、小渕優子元経済産業相ら自らの閣僚らが不祥事に見舞われてきた「政治とカネ」の問題だ。疑惑を晴らすべきは安倍氏自身である。
不記載の理由について、多額の補填による利益供与を隠すためではないかとの野党の指摘に、安倍氏は「利益供与をして票を集めようとは私も事務所もつゆほども考えていない」と述べた。これを額面通りに受け止める有権者がどれほどいるだろうか。
公設第1秘書が政治資金規正法違反の罪で略式起訴され、首相経験者が、東京地検特捜部から事情聴取を受けるなど捜査対象となった事実は極めて重い。
野党が議員辞職を求めたのに対し、安倍氏は否定した。今後、国会議員として有権者の負託に応えるには、どこまで行動で責任を果たせるかにかかっている。