一方、過去の災害からの復旧に向けた動きが具体化した1年でもあった。
平成29年7月の九州北部豪雨で被災し、福岡、大分両県にまたがる一部区間で不通となったJR日田彦山線は7月、バス高速輸送システム(BRT)への転換が決まった。鉄道での復旧を強く望んだ地元との3年超の協議の末、ようやく地域再生に向けた一歩を踏み出した。熊本地震で不通となったJR豊肥線の一部区間も復旧し、九州屈指の観光路線が4年4カ月ぶりに全線開通した。
とはいえ、7月の豪雨で肥薩線が不通になるなど、JR九州のネットワークは傷つき続ける。国鉄民営化時、経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)な「三島会社」と呼ばれた北海道、四国、九州の3社の中で、JR九州は都市開発や多様な観光列車などで成功し、先んじて上場を果たした。しかし、相次ぐ自然災害への対応に加え、コロナ下での大幅な旅客数落ち込みなどで先行きに黄信号がともる。
このように災害や新型コロナが目立った1年ではあったが、将来を見据えた動きも着実に進んだ。
福岡市は8月、天神地区の再開発事業「天神ビッグバン」で、感染症対策を講じることを前提に適用期限の2年間延長を決めた。また、9月には、香港の国際金融センターとしての機能が政情不安の影響で低下していることを受け、福岡がその受け皿となることを目指して、政財学界が一体となった誘致組織「TEAM FUKUOKA」を組織した。国際金融センターの誘致を目指す東京や大阪との競争にいち早く名乗りを上げた。
10月1日、長崎県を地盤に、しのぎを削り続けたライバル行同士が合併し、十八親和銀行が誕生した。システム統合や、支店の統廃合によって生み出した余力を、地域経済の活性化に振り向ける。