新型コロナウイルス下でも、自然の猛威に容赦はなかった。毎年のように災害に襲われてきた九州・山口では今年も甚大な被害に見舞われた。
熊本、大分、福岡の3県を中心に多数の死傷者を出した7月の豪雨や、「史上最強クラス」とされた9月の台風10号などでは、避難先での新型コロナ感染拡大やクラスター(感染者集団)発生防止という難題も新たに意識された。
避難所では保健師らによる避難者の検温や体調の聞き取りなど入念な確認を徹底。段ボール製のベッドや間仕切りなどで、避難者同士の接触も極力減らそうと工夫した。ボランティアやインフラの復旧要員も感染拡大を防ぐ対策を強化した。
今年の豪雨被害は、治水対策に転換をもたらした。熊本県の蒲島郁夫知事は11月、甚大な被害がでた球磨川流域の最大支流、川辺川でのダム建設を容認したのだ。川辺川ダムをめぐっては、蒲島氏が平成20年に計画反対を表明。翌21年に当時の民主党政権が中止を決めた。ただ、代替の治水対策は、莫大な費用や工事期間の長期化が見込まれるなど課題が多く、十分に検討が進まない中、豪雨で球磨川が氾濫し、多数の人命が失われた。これに対し「重大な責任を感じる」(蒲島氏)と方針を転換した。