鑑賞眼

鼓童ワン・アース・ツアー2020~鼓 コロナ禍に響く疫病退散の祈り

「鼓童ワン・アース・ツアー2020~鼓」より(岡本隆史撮影)
「鼓童ワン・アース・ツアー2020~鼓」より(岡本隆史撮影)

 太鼓を中心に日本の伝統的な芸能をアレンジして世界各地で公演を重ねる太鼓芸能集団「鼓童」が令和3年、創立40周年を迎える。今年はコロナ禍で海外ツアーを中断、多くの国内公演も中止となったが、今秋から半年以上かけて全国をめぐる記念公演「ワン・アース・ツアー2020-21~鼓」をスタートさせた。

 休憩を入れて2時間弱の公演は、一糸乱れぬ完成度の高いパフォーマンスと、体の奥に直接響いてくる太鼓の音が、命の力強さを表現してくれる。「太鼓のパフォーマンス」と思い込んでいたが、さにあらず。しの笛や摺鉦(すりがね)といった多彩な和楽器を用いて緩急をつける。歌あり踊りありの総合芸術は、和のミュージカルのようでもあり、どこか郷愁を誘う。コロナ禍で触れることができなくなった各地の祭りを思い出す人も多いだろう。

 もちろん彼らの一番の魅力は太鼓であり、その種類だけでなく、たたき方によってもさまざまな音色が生まれる。「たたく」という動作はシンプルではあるが、鍛え抜かれた奏者によってしか真の音色を解放してくれない太鼓は、実にストイックな楽器だ。

 演出を担当した鼓童の船橋裕一郎代表は、コロナにより、当初考えていた客席を使う演出を見送ったという。稽古時間が短くなったり、指導の先生を迎えられなかったりと、苦労も多かった。それでも「新たなチャレンジなど有効に時間を活用できたこともあった」と前を向く。

 舞台と客席を見守るように中心で静かに鎮座していた大太鼓は、2幕後半で動き出す。石塚充が全身全霊で奏でる地鳴りのような音は、コロナ禍に響く疫病退散の祈りそのものであった。

 12月17日、東京・文京シビックホール大ホール。全国ツアーは21年7月まで。問い合わせは鼓童0259・86・3630。(道丸摩耶)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。