「半沢」「鬼滅」が一矢…エンタメの意義、問い直す一年

舞台・ライブ大打撃、オンラインに活路

 観客を入れて行うコンサートや演劇、寄席なども甚大な影響をこうむった。ライブ・エンターテインメント業界の年間ダメージは、6900億円に上るとする試算もあった。

 夏以降、徐々に有観客での公演が再開されてきたが、当たり前だったすし詰めの観客席には遠い状況。その中で注目されたのが、オンラインでの公演配信だ。

 6月25日夜の横浜アリーナ(横浜市)。「サザンオールスターズ」初の無観客有料ライブは、このホールの収容人数(約1万7000人)の10倍以上にあたる約18万人が3600円のチケットを購入、推定視聴者数は約50万人に上った。「この情勢下、配信が優れた収入源になることを証明した」(芸能関係者)とされる。「サザン」は、大みそかも配信ライブを実施。同日はアイドルグループ「嵐」も活動休止前のライブを配信する。どちらも有観客でも多くの動員が見込まれるが、配信ならさらに多くのファンが目にすることになりそうだ。

 落語も寄席が閉鎖される中、いち早くオンライン配信を始めた。単に落語を流すだけでなく、観客はオンラインでアイテムを購入することで、投げ銭拍手のような機能が使える配信もあり、演者と観客の双方向でのやり取りが今年のトレンドともなった。

洋画公開ストップ、映画「鬼滅」が快進撃

 映画界もコロナによる大打撃を受けた。3月以降、予定されていた映画は次々に公開延期に。夏休みに「ドラえもん のび太の新恐竜」などは上映されたものの、延期となったままの作品も多い。特にハリウッド映画は事実上公開がストップしており、興行収入上位の映画の大半が日本映画というかつてない状況に。

 その中で、一矢を報いたのが、原作が大人気の「鬼滅の刃」(吾峠呼世晴=ごとうげ・こよはる=作)の映画で、10月16日に公開された「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」だ。公開わずか10日目に興行収入100億円を突破。その後も順調に興収を伸ばし、これまで1位だった「千と千尋の神隠し」(316億円)超えも時間の問題とみられる。

志村さん、岡江さん、コロナに倒れる

 代えようのないタレントたちの命も奪われた。

 緊急事態宣言直前の3月29日、コメディアンの志村けんさんが、コロナによる肺炎で死去。70歳だった。志村さんが倦怠(けんたい)感を訴えてからわずか2週間ほどでの逝去だった。大きな喪失感と同時に、新型コロナの恐ろしさを日本中に知らしめた。

 また4月23日には、女優の岡江久美子さんもコロナ肺炎で死去。63歳の若さだった。感染防止のため夫の大和田獏さんは火葬にも立ち会えず。自宅の玄関で遺骨を受け取る姿は、コロナの特異性や、行動様式の変容を強く印象づける場面となった。

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