遅すぎる。それでも、やるべきだ。新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正である。
政府の新型コロナ対策分科会で特措法の改正に向けた議論が始まった。政府・与党は来年1月召集の通常国会に改正案の提出を目指すという。自粛の要請などへの強制力や、財政支援のあり方などが焦点となる。
23日の分科会を終えた西村康稔経済再生担当相は「特措法改正の必要性はおおむね理解を得られた」と述べた上で、「年末年始を静かに過ごすようお願いしたい」と呼びかけた。
お願いばかりが繰り返されるのは、現行の特措法が強制力を伴わないためである。
特措法は今年3月に新型コロナも適用対象とするよう改正され、政府は4月に緊急事態宣言を発令した。だが特措法には店舗の休業や外出、移動の自粛について協力の要請はできるが、従わなかった場合の罰則規定はない。休業等の補償についても規定がない。
このため要請や指示に法的根拠を持たせ、強制力と補償を伴うさらなる改正を求める声は、今春の感染拡大時からあった。
だが政府は、特措法改正の重要性は認めながらも、時期については一貫して「新型コロナの感染が収束した後に検証、検討する」といった答弁に固執してきた。
随分悠長な姿勢だった。今、目の前にある危機に対処できなければ、法改正の意義は減じる。本紙は何度もそう批判してきた。
第3波による感染拡大が止まらず、18日には自民党の新型コロナ対策本部が「国民の心に届くメッセージを発信したい」として来年の通常国会で法改正を目指すと決めた。全国知事会も20日、緊急提言で特措法改正を強く求めた。
政府もようやく重い腰を上げた格好だが、改正案の提出、成立にはスピードが求められる。早期成立の壁は「私権の制限」に対する反発への懸念だとされる。
憲法は移動の自由などを保障しており、これに反する可能性があるといったものだが、憲法22条第1項は「公共の福祉に反しない限り」として条件をつけている。感染症との戦いは「公共の福祉」と位置付けるべきである。
躊躇(ちゅうちょ)の猶予はない。もう十分に遅れている。政府・与党は改正特措法の中身を早期に固め、国会での議論を進めてほしい。