主張

「医療緊急事態」 菅首相は行動抑制を促せ

 日本医師会や日本看護協会、日本病院会など医療関係9団体が合同記者会見で独自の「医療緊急事態」を宣言した。

 宣言は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて「このままでは全国で必要な全ての医療提供が立ち行かなくなる」と訴えている。

 医療が崩壊すれば、新型コロナへの対応はもちろんのこと、その他の病気にも十分に対処できなくなる。まず年末年始の態勢だ。医療関係者も休みに入るこの時期は例年も医療提供体制が手薄になる。だがウイルスに暦は関係ない。政府や自治体、地域の医師会、病院は連携して新型コロナに対応することが求められる。

 新型コロナ対応に献身的に当たってきた医師や看護師など医療関係者は疲れている。国や自治体は交代要員の手配や処遇も含め、物心両面で支援すべきだ。

 ただ、そうした手当てだけでは新型コロナ禍を乗り越えられない危機的な段階にきているから、9団体は緊急事態宣言を出したのである。医療崩壊を防ぐために一番必要なことは、感染拡大を抑制し、患者を減らすことだ。

 人と人との接触をさらに抑制する必要がある。医療提供体制に関する東京都の警戒度は、4段階で最も深刻な「逼迫(ひっぱく)」のままだ。政府分科会の尾身茂会長は21日の会見で、東京など首都圏は「感染拡大継続地域」だと指摘した。

 厚生労働省に助言する専門家組織の脇田隆字座長は「大都市で制御しないと地方での感染制御が困難になる」とも述べた。

 小池百合子都知事は21日の臨時会見で「年末年始は家族でステイホームを」と呼びかけた。加藤勝信官房長官や西村康稔経済再生担当相は、今は最大限の警戒が必要で徹底した対策をとるよう繰り返し述べている。

 だが、繁華街などの人出は思うように減っていない。呼びかけは国民の胸に、春先のようには届いていないようだ。日本病院会の相沢孝夫会長は9団体の会見で、期限付きで「国民の移動制限や行動制限を政策として掲げなければだめではないか」と述べた。

 政治のリーダーが明確な意思を発信しなくては社会の空気は変わらない。菅義偉首相には行動制限に軸足を置く新型コロナ対策への転換を求めたい。その必要性を、直接国民に呼びかける緊急会見も望みたい。

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