23日に87歳となった上皇さまは現在、週に2回ほど、お住まいの仙洞(せんとう)仮御所(東京都港区)から皇居内の生物学研究所(生研)に通い、皇太子時代からのライフワークであるハゼの研究に取り組まれている。譲位後初めてとなる論文の完成も近いといい、生研関係者は「ここ数カ月は、特に精力的に取り組まれている」と明かす。
「地道に、こつこつと顕微鏡に向かい、小さなハゼのわずかな特徴の違いを、忍耐強く確かめられていた」。昭和40年代から、当時の東宮御所の研究室で手伝いをしていた関係者は、皇太子時代に確立されたという上皇さまの研究スタイルを、そう説明する。
即位後も、「多忙な日程の合間に、時間を見つけては標本に向かわれていた」(関係者)といい、これまでに30以上の論文をご執筆。ハゼ研究者としてのご功績は世界的に知られている。
上皇さまが現在取り組まれているのは、南日本に生息する「オキナワハゼ属」に関する論文。皇太子時代の論文をもとに、新たに国内外の標本の比較研究を進められてきたといい、研究を支える宮内庁上皇職御用掛の林公義(まさよし)さん(73)は「完成は間近」と話す。
今年は新型コロナウイルス禍で4月以降、2カ月ほど生研に通えない時期もあったが、オンラインも活用し、生研職員との意見交換をご継続。5月末に生研での研究が再開してからは、集中的に標本に向かい、仮御所に戻る際に文献を持ち帰られることもあったという。
「これからはできるだけ、研究にいそしみたい」。上皇さまは譲位後、周囲にそう語られていたという。林さんは「研究者としての熱心なご姿勢は、年齢を重ねられた今も変わらない」と話す。