「根本的にTPOを間違えてしまいましたね。仲間内のギャグを不特定多数が見る場で言ってしまうと…そうなるのも仕方がない」
そう苦笑するのは、関西大学人間健康学部の森下伸也教授。「ユーモア学」を提唱し、「日本笑い学会」(大阪市)の会長を務めている。
聞いたのは、間(ま)が悪い、無神経だ-などとやり玉に挙がった揚げ句、最近では同情論も出ている菅義偉(すが・よしひで)首相の「みなさんこんにちは。ガースーです」発言だ。今月11日に動画配信サイト「ニコニコ生放送」に出演した際のこと。ネットで自身が「ガースー」と呼ばれているのを踏まえてのものだった。
「そもそも逆さ読み(倒語)は確か、昔、ジャズの仲間にはやったのが業界に広まったもの。本来、親密な空間の中だけでやりとりされる言葉であって、それを見誤ったわけです」と手厳しい。
つまり、限られた人だけならユーモアととらえられたが、さまざまな人が見るオープンな場では笑えない人が多かったというわけだ。
とかく笑いは難しい。
その笑いとユーモアに関する総合的な研究を行い、笑いの文化的発展に寄与しようと活動するのが日本笑い学会だ。会員は現在800人超。学者や医師、教員から作家、タレント、僧侶、主婦、学生と多彩で研究分野も多岐にわたる。近年なんといっても人気が高いのが医療・健康分野だそうだ。笑いは心身をリラックスさせ、免疫を高めてくれるとされている。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大で日常から笑いが減ったように感じていた。その疑問をぶつけてみると…。
「そりゃそうですよ。人は近づくところに笑いが生じる。そもそも、3密を避けろとかマスクをつけろとか、コロナ対策自体が笑いに対して敵対的だといえるでしょう」