新聞に喝

「天声人語」書き写しの異様 元東京大学史料編纂所教授・酒井信彦

11月26日、日本新聞協会の第73回新聞大会が神戸で開催され、決議文が採択された。そこには「新聞は正確で公正な報道を通じて、責任ある言論活動を行わなければならない」とあるが、今までの経緯を考えれば、媒体によってはそれを実行できるのか、素直に信用する気になれない。

それに先立つ22日、同じく日本新聞協会が主催する、第25回NIE全国大会東京大会が、これはオンライン方式で開催された。NIEとは、ニュースペーパー・イン・エデュケーションのことで、新聞を教育に利用することを意味する。一見、素晴らしいことのように思えるが、新聞報道の現状そのものに、常日頃から多大の疑問を感じている人間としては、大きな危惧を覚えざるを得ない。

新聞のNIE活動には多様なものがあるだろうが、その中でも私が最も注目するのは、新聞の著名コラムの書き写し運動である。朝日新聞が「看板コラム」と自称する天声人語には、「天声人語書き写しノート」なるものがあって、書店でも販売されている。読売新聞も同様の「編集手帳書き写しノート」を出しているようだ。

天声人語のノートの方は、通常版を含めて現在4種あるらしいが、平成23年4月の発売からこれまでに400万冊以上が売れているという。そのうたい文句は、書き写しによって文章力・語彙力がつき、時事問題への関心も高まるということで、学校教育の現場にも導入されているという。

しかしコラムの内容こそ問題である。天声人語の内容は人畜無害な歳時記風のものもあるが、日本に対する偏見と差別に立脚した、胸の悪くなるような偽善に満ちたものも、また多い。それは日本人同胞をおとしめることによって、自らを反省できる良心的人間だと錯覚する、ゆがんだ正義感に基づく虐日偽善だ。

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