公立小学校の全学年に「35人学級」を広げることが決まった。1学級の児童数の上限を現行の40人から引き下げ、少人数学級化を進める。
きめ細かな教育を行うためだが、教員の指導力が伴ってこそだ。授業をはじめとした教育の中身の充実を忘れないでもらいたい。
小学1年ですでに35人学級が導入されているが、大規模な引き下げは約40年ぶりになる。文部科学省は、来年の通常国会に義務教育標準法の改正案を提出する。
少人数学級拡大は教育界の宿願だったと歓迎する向きもあるが当然、教員増が必要になる。問題教員ばかり増える結果に終わっては教育の信頼回復に繋(つな)がらない。
少人数学級の議論は、予算編成時期になると繰り返されてきた。文科省は中学を含めた少人数学級化を求めてきた。これに対し財務省側は教員を増やす財源問題のほか、いじめや学力などの調査で少人数学級の明確な政策効果がみられないなどとして慎重だった。
今回は新型コロナウイルス対策で教室の「3密」回避が必要となり、まず小学校で実現したかたちだ。しかし、中学での導入や「30人学級」などさらなる少人数化の求めがある。限られた財源で他に優先すべき施策はないか、さらに慎重に検討してもらいたい。
「3密」回避といって児童の間隔を空けることだけがコロナ対策ではあるまい。休校時にオンライン(遠隔)授業を含め十分な指導を行えた学校は多くはないのではないか。肝心なのは危機にこそ柔軟に対応できる教員の指導力を高めるための施策だ。
受け持つ児童生徒が少なければ、上手に指導できるのか疑問である。少子化で1学級が20人台、もっと少ない地域も多いが、少人数でも指導力不足の教員が学級崩壊を招く例もある。
少人数指導が必要なら、学級人数の一律引き下げより、地域事情や教育政策に応じ、教員定数に上乗せする加配教員の配置を工夫する方が現実的だ。
少人数学級のねらいでもある子供の個性に応じた目配りは、教員相互や家庭との連携を含めたチームプレーが欠かせない。そのリーダーとなる教員養成も必要だ。
教員人気に陰りがでる中、教職の魅力を高め、意欲ある優秀な教員を採用、育成する施策こそ優先してもらいたい。