建設現場で建材に含まれるアスベスト(石綿)を吸い、肺がんなどを発症したとして、全国各地で元労働者らが国と建材メーカーの責任を追及した「建設アスベスト訴訟」は、14日付の最高裁決定で国の賠償責任が初めて確定した。個人事業主である「一人親方」を含めるなど、救済対象の労働者を幅広く認定しており、補償をめぐる国の議論に影響を与えそうだ。今後はメーカーの責任が焦点になるが、今回の決定でメーカー側への請求も認められる可能性が出てきた。
平成20年の提訴から始まった一連の訴訟は、原告全面敗訴だった24年横浜地裁判決を除き、1、2審を通じて対応の遅れなどを認定された国が14連敗。さらに、国側が否定してきた一人親方や中小事業主に対する責任についても、最高裁決定の対象となった東京訴訟をめぐる30年3月の東京高裁判決以降、救済対象とする判決が相次いでいた。
国側は一連の訴訟で一人親方について、労働安全衛生法で保護される「労働者」に当たらないと主張してきた。しかし、東京訴訟の2審判決は「建設現場で重要な地位を占めている社会的事実を考慮すれば、保護の対象になる」として一人親方も救済範囲に含まれると判断。最高裁第1小法廷もこの判断を支持したことで、最高裁に上告中の横浜、京都、大阪、福岡の各訴訟も同様の判断になる可能性が高い。
弁護団の小野寺利孝団長は「今回の最高裁決定は、全ての訴訟における国の責任を確定させる意義を持つ。国は被害者に謝罪し、全ての訴訟を早期に全面解決すべきだ」と強調した。
今後の焦点は建材メーカー側の責任だ。当初は「どの企業の建材が発症原因になったか特定できない」などと退ける判断が続いたが、28年の京都訴訟の1審判決は、建材の種類や市場シェアに応じてメーカー側も賠償責任を負うと初判断。2審でも京都、大阪、福岡、横浜などの各訴訟では、メーカー側の責任が認定されていた。
第1小法廷は、今回の東京訴訟で2審が認めなかったメーカー側への請求部分についても、結論の見直しに必要な弁論を来年2月25日に開くことを決めた。第1小法廷ではほかに横浜、京都、大阪の3訴訟、第2小法廷には福岡訴訟が係属しており、2審段階で判断が異なったメーカー側の責任や、違法と認められる期間などについて統一見解を示すとみられる。