【漫画漫遊】日系人強制収容の記憶 <敵>と呼ばれても ジョージ・タケイほか著、ハーモニー・ベッカー画、青柳伸子訳 作品社  - 産経ニュース

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日系人強制収容の記憶 <敵>と呼ばれても ジョージ・タケイほか著、ハーモニー・ベッカー画、青柳伸子訳 作品社 

ジョージ・タケイほか著、ハーモニー・ベッカー画、青柳伸子訳『<敵>と呼ばれても』(作品社)
ジョージ・タケイほか著、ハーモニー・ベッカー画、青柳伸子訳『<敵>と呼ばれても』(作品社)

 米人気テレビシリーズ「スタートレック」のスールー役で知られる日系米国人俳優、ジョージ・タケイが自身の半生を振り返ったグラフィックノベル。先の大戦中、在米日系人が受けた強制収容の記憶を現代に伝える貴重な内容である。

 1937(昭和12)年、ロサンゼルスで生まれたタケイの生涯は、4年後の真珠湾攻撃を機に一変する。ある日突然、5人家族が咎(とが)なく家を追われ、強制収容所に収監されたのだ。劣悪な環境での生活。家畜のような「番号札」を付けられた3人の幼子とその両親は、終戦まで全米各地の収容所を転々とさせられる。

 日系米国人は「敵性外国人」とされ、西海岸から約12万人が10カ所の収容所に送られた。「合法化された人種差別」であった(後年、米政府は謝罪)。本書には、当時の日系人が味わった針のむしろの空気感、絶望感がリアルに描かれ、胸が苦しくなる。収容所内で、人々はどういう生活を送ったのか。日系人同士の確執など、当事者しか知り得ない内幕も記される。

 救いは、この悲惨な環境を少しでも良くしようと努力した日系人と、世間の反日感情に負けずフェアネスを貫いた米国人の存在だ。特に、自らの危険をも顧みず収容者を保護したクエーカー教徒のハーバート・ニコルソンと、米市民権を放棄せざるをえなかった日系人保護に尽力した弁護士のウェイン・コリンズの2人の行動は、もっと知られるべきであろう。

 タケイ自身は、当時の悲惨な生活を「発見に満ちた冒険」と楽しむ記憶も持っていた。収容所内でも一部の映画は見ることができ、そこで実感した「映画の力」が、後に世界的俳優への道を歩む原風景の一つになったようだ。

 「そのようなこと(強制収容)が起きたはずがない」と考える米国人がいる-。タケイは日本版あとがきで、その種の人々を含めたあらゆる年齢層の人々に理解してもらうことが執筆の動機だったと明かす。歴史の記憶は人々の想像以上に早く薄れるし、現代でも差別意識は世界各地で根強く残る。「忘れない」ことがいかに大切か。使い古されたフレーズだが、それを改めて思いださせてくれる作品である。(文化部 本間英士)