「動物園マニア」の目線で天王寺動物園の経営を進めている牧慎一郎園長が、国内で唯一、同園で飼育されているドリルの「ドン」を紹介します。園長も太鼓判を押すイケメンぶりだとか。
牧園長が平成27年4月から産経新聞で掲載してきた動物園日記の過去記事から選りすぐりをお届けします。
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12月といえばクリスマスシーズン。当園でもクリスマス期間にいろいろなイベントを用意しています。例えば、12月25日には「ドリルにクリスマスケーキプレゼント!」という企画を予定していますが、皆さんドリルってご存じですか?
「ドリル」というのは、アフリカに住むヒヒの仲間です。近い種類で「マンドリル」がいて、こちらの方が有名ですね。
当園では、昔ながらのサルヒヒ舎でマンドリルとドリルが並んで飼育展示されていて、両者を比較した観察ができるのが展示の特徴。マンドリルは派手な色柄の顔をしている一方、ドリルの方は真っ黒な体に真っ黒な顔。なぜこうも違った姿になったのか、進化ってホント不思議だなぁ。
さて、ドリルは、野生では中部アフリカ西海岸のナイジェリアからカメルーンにかけた熱帯雨林に生息しているのですが、野生の個体数減少は著しく、絶滅の危機にひんしています。飼育下でも世界中の動物園での飼育頭数を足しても50頭ほどしかいないという超超貴重種。
そして、日本にいるドリルは、なんと当園の「ドン」君のみなのです。数年前までは日本モンキーセンターに1頭いましたが、今や日本唯一の存在。
ドンは、天王寺生まれの20歳のオスで、年の頃としては壮年といったところ。立派な体格で貫禄がありますし、黒い顔が実にりりしい。
動物園の業界では、近年、名古屋市の東山動物園のオスゴリラ・シャバーニが「イケメンゴリラ」と呼ばれて女性ファンからの人気が出ていますが、うちのドンだって負けないくらいのイケメンだと私は思いますよ。
気づかずに通り過ぎてしまうのはもったいない。当園にお越しの際は、当園でしか見られない孤高のドリルに注目してみてください。
(天王寺動物園長兼改革担当部長 牧慎一郎、平成28年12月17日付朝刊から)